オーブリー&マチュリン「21」(その21)

皆さま、先週NHK-BS2で放送された「マスター・アンド・コマンダー」はご覧になりました?久々にフルで見ましたが、やっぱり何度見てもいいな〜。

日本語版字幕が変わっていましたね。DVDやWOWOWの放送の時は、だいたい劇場版と同じ字幕なのに、NHK-BS放送時はたいがい違うのは、何か権利の問題でもあるんでしょうか?まあ、この映画の場合、今度のもしっかりした良い字幕だったと思いますけど。

主な相違としては、原作翻訳版や劇場用字幕では「海尉」と訳されているlieutenantが「准尉」となっていましたね。当時の英国海軍におけるlieutenantという階級を正確に表す日本語はないので、「海尉」というのは日本の海洋小説の翻訳家がオリジナルで作った言葉だそうです。なので、まあ、どちらが正しいということはないのですが。

それより、一番印象的だったのは「Choose the lesser of two weevil」のダジャレが新訳になっていたことですね。これは、原作では6巻2章に出てくるシャレです。

http://www002.upp.so-net.ne.jp/kumiko-meru/tfow_2.htm

これ、劇場版字幕では「強い敵は無視(虫)しろ」となっていましたが、今回はコクゾウムシを幼虫ということにして「大きい敵には要注意(ヨウチュウイ)」...いろいろ考えるんだなあ、と笑ってしまったのですが。

もともとは、「Choose the lesser of two evil 小さい方の悪(よりマシな方)を選べ」のevil(悪)とweevil(コクゾウムシ)をひっかけたダジャレなのですが、映画では「海軍では、小さいコクゾウムシ(悪)を選ばなきゃならないってことは誰でも知っている」となっていて、それが後の、もっとシリアスな会話にもつながってくるので、ほんと、難しいんですよねここの訳は。

と、前置きを長くしているのは、今回の「21」紹介が短いためなんですが(笑)。

「ナポレオンに会った時の通訳のために、ドクター・マチュリンに旗艦に来てほしい」というレイトン提督の図々しいお願いを断るため、理由のひとつとして、ジャックは「サフォーク号には、ドクターが手術しなければならない重症のヘルニア患者がいる」と言います。まあ、これは本当のことなのですが。

レイトン提督は、スティーブンを旗艦に呼ぶのは諦めたようですが、その手術の話を聞いて、「もしそれが血がたくさん出るような大手術なら、ぜひ甥のミラー大尉を見学させてやってほしい、彼はそういう手術が大好きで、四肢切断手術などがあると見逃さない」と言います。

まあ、血なまぐさい手術に、怖がりながらも興味を示してしまうのは人間の常のようで、映画でもジョー・プライスの頭蓋手術には人だかりができてましたけどね。でも、手足を切断したりする手術をわざわざ見学するなんて。ミラーは、嫌な奴なだけじゃなくて、マジでキモい奴なんじゃないでしょうか。うーん。

さて、その後すぐ、南アフリカ艦隊はブエノス・アイレスから喜望峰に向けて出航になります。サフォーク号は、仕方なくミラー大尉を乗客として乗せて行くのですが、案の定、彼は毎日のようにクリスティーンを訪れてピケット(トランプのゲーム)だのバックギャモンだのに誘うのでした。

ティーブンが妨害できたらいいのですが、彼は仕事があるからなあ。艦に乗っている陸軍さんは、することもなくてヒマなのです。

南米からアフリカまでの航海は、途中でちょっと嵐に見舞われたりはしたもののまずは順調で、1ページ以内で済んでしまいました。大きな艦で双子も船酔いを克服したようで、船の用語をどんどん憶えて使うようになっていて、それはそれで迷惑がられているようです(笑)。

アフリカに到着してすぐ、スティーブンはドクター・ジェイコブと一緒に例のヘルニア患者の手術をすることにして、約束通りミラー大尉に知らせに行きます。ミラーは例によってクリスティーンを訪問しているところだったのですが、ヘルニアの手術はたいして血が出ないと聞くと、「ご親切に知らせてくれてありがとうございます。しかし、今回は遠慮します」と断るのでした。

彼がいなくなると、それまで明らかに嫌な顔をしていたクリスティーンは、スティーブンに言うのでした...「スティーブン、マイディア、実はお願いがあるのだけど...」