【映画感想】Win Win ☆☆☆1/2

<あらすじ>ニュージャージーの小さな町で弁護士をしているマイクだが、事務所の経営が思わしくなく、壊れたボイラーやトイレの修理さえ呼べない始末。地元の高校でレスリング部のコーチもしているが、チームは連戦連敗。経営危機を妻に言えず、ストレスで過呼吸になったりするサエな日々。そんな時、クライアントの老人の認知症が悪化、後見人が必要になる。老人の唯一の身内である娘は行方不明。小金持ちである老人の後見人になれば結構な手数料が入るとあって、金目当てで後見人を引き受けるマイク。しかし、老人の孫と名乗る16歳の少年が突然現れて、事態は思いがけない方向に...

ポール・ジアマッティって、好きな俳優なんだけど、見ていると複雑な気分になることがあるのですよね。

中年で腹もでているし、そもそも若い頃からハンサムじゃないし、どーにも冴えない感じで...いや、演技は上手いし、もともと冴えない男の役なのだからそれでいいのだけど。でもさ、女優だったら、この年齢この体型この容姿レベルで、こういう映画の主役を張れるだろうか?と考えてしまうのですよね。この映画でだって、彼の奥さん役の女優さんは、年はいってるし地味作りしているとはいえ、美人だしスタイルもいいものね。

あー、こんな映画で世の不公平に思いを馳せても、しょうがないのですけど。

これはね、昨日書いた「ソースコード」とは対照的に、ネタバレが気にならない映画だと思います。(でも上のあらすじは、パッケージ写真から予測つく範囲しか書いてませんけど。)

どうしてそうかと言うと、これは「キャラクター主導」のドラマだからなのですね。主人公のマイク。奥さんのジャッキー。少年カイル。マイクの友人テリー。いずれも登場早々からその性格がしっかり分かるように描かれていて、「この人ならこうするだろう」という行動をとる。だから、ストーリーの予測はある程度つくのですが、だからつまんないということは全然ない。むしろ、それが心地よい。

それと、登場人物みんなが聖人君子というわけじゃないけど、主人公も奥さんも友人も少年も、「未成年の少年→他人であっても保護しなきゃ」とか、「老人の最後の望み→多少無理があっても叶えなきゃ」とか、「レスリング部の弱い選手→でも1度は試合に出るチャンスを与えなきゃ」とか、当たり前のように基本を押さえているのが良いのです。

まあ、途中から登場する少年の母親だけは、そういう「信頼」が置けないタイプなので、後半は彼女が振り回す展開になるのですが。

でも、公平を期すと、少年のしっかりした性格からして、この母親だってずーっと無責任だったわけじゃないと思うのよねー。たぶんある時点までは、ちゃんとやってたんだと思う。でも、たぶん夫が逃げるかなんかして、金に困って、その後付き合った男もダメダメばかりで、そのうち少年も反抗的になって問題起こすし、自分はドラッグにハマってしまうしで...でもその時点まで、お金のことで父を頼って来なかったってことは、老人が彼女にとって良い父親じゃなかったってことも、多分本当なんだろう。

まーそれは、父親の面倒見ない理由にはなっても、息子の面倒をちゃんと見ない理由にはならないのだけどね。

とにかく、世の中、いい人も悪い人もいるのは確かだけど、いい人と悪い人がすっぱり二分されてるわけじゃなく、グラデーションになっている。この映画だと、いい人度で並べると、主人公の妻>主人公>主人公の友人>少年の母 という順番になるわけですが。(老人と少年は、「認知症」「未成年」という要素で大人の責任を免除されているので除く。)

その「いい人度」も、生まれ育ちや自分の意志だけで決まるものでもなくて、外的要素によって影響される。外的要素っていうのは、ほとんどの場合、早い話が金なわけで。誰でも、金に困れば困るほど、気高さレベルをどんどん滑り落ちて、卑しくなっちゃうわけで。

ウィンターズ・ボーン」の主人公の少女のように、どん底貧乏なのに気高さレベルは最高、という人間も、どこかにはいるのでしょうけど...まあめったにはいないよね。

貧すりゃ鈍すの凡人は、金に困ると、人に冷たくなったり、金目当てで利用したりとなるわけですが、そうすると冷たくされたり利用されたり人も、その分困って、卑しくなって、自分のまわりの人のレベルがどんどん落ちて、結局自分も生き辛くなったり...

困ったときこそ、人に親切にしてみると、それがいい方に転がって、Win-Winの関係になったり。

まあ、そういう話でした。