It Gets Worse - ジョン・マケインへのメッセージ(先々週のThe Dail

1日遅れたけど、Happy Birthday, Jon! 48歳か...

さて、The Daily Showは先週は感謝祭休みだったのですけど、今週は復活です。その前に、先々週のセグメントからひとつ。

The Daily Show with Jon Stewart 2010/11/15 It Gets Worse PSA

ゲイの学生が、同級生からのいじめを苦に自殺した事件をうけて、アメリカでは「It gets better」(これから先は良くなるよ)という政府広報キャンペーンが行われています。

ゲイであることをオープンにしているセレブが参加して、同性愛を理由に学校でいじめられたり、オープンにできなくて悩んでいる若者たちに向けて、今はつらくても、大人になれば、また世の中がこれから変わってくれば、状況は今より良くなってくるから早まらないで、と訴えるビデオメッセージのキャンペーンです。

Glee」のカート役のクリス・コルファー、カロフスキー役(※)のマックス・アドラーもメッセージを寄せています。

http://www.youtube.com/watch?v=OggHyG6TfLM

http://www.youtube.com/watch?v=aHfM_iV-554

あ、今日(日本時間明日)のコルベア・レポートのゲストは、このプロジェクトの提唱者ダン・サベージですね。それを見たら、また改めて。

さて、このキャンペーンには芸能人だけではなく、オバマ大統領をはじめとする政治関係の人もメッセージを寄せているのですが、ここで話題になっているのは、元大統領候補のジョン・マケイン上院議員の妻、シンディ・マケインが出演していることです。もちろんそれはいいことなのですが、問題は、ここでマケイン夫人がアメリカ軍の「Don't ask don't tell (DADT)」(※)ポリシーに反対しているともとれる発言をしていることです。

シンディ・マケイン:LGBTの人々は、それをオープンにして軍に入隊することもできないありさまです...

なぜこれが問題であるかというと、彼女の夫であるマケイン議員は、DADTの撤廃に、ずっと反対し続けているからなんですよね。

しかも、彼はずっと前から、「軍のリーダーたちが撤廃すべきだと言ったら」「兵士たちを調査して、撤廃しても士気に影響ないとわかったら」撤廃していい、と言っていたのに、将軍や国防長官が「撤廃すべき」と議会で証言し、1年もかけた調査で兵士の大半が撤廃に賛成していることが判明してからも、前言を翻して反対し続けています。

ジョン・スチュワート:兵士が人権を守られるべきかどうか決めるのに1年かけてもまだ足りないのに、自分の副大統領候補を誰にするかは30分で決めるのが「マーヴェリック」流ってやつなんだね!※

そこでデイリーショーは、ジョン・マケイン議員へのメッセージとして、「It Gets Better」ならぬ「It Gets Worse(これから悪くなるよ)」というPSA(Public Service Anouncement 政府広報)を作りました。

ジョン・オリバー:ハロー、マケイン議員...Don't Ask Don't Tellの件では、辛い思いをしているんだろうね。

ジェイソン・ジョーンズ:でも、ぼくらの言うことを信じて...

ショーン・ヘイズ:これから、もっと悪くなるんだから!

ワイアット・セニャック:マジな話、こっからは落ちる一方だよ!

ジェイソン:軍隊さえ、もうあなたと意見が違う。

ショーン:あなたの奥さんも、あなたの意見に反対だ。

ジェイソン:あんたの奥さんまで!なんてこった!

オリバー:奥さん、美人だねえ。でも、ここではそれは関係ないよね。

ワイアット:これから悪くなるよ〜。

ショーン:だって、遅かれ早かれ結局は、ゲイの人たちは軍隊に入れるようになるんだ。

ワイアット:そして何年かしたら、この件についてのドキュメンタリーができる。

オリバー:で、社会の変化に関するドキュメンタリーには、必ず悪役が出てくるって知ってる?

ジェイソン:変わるべきだってもう誰もが分かっているのに、必死で抵抗しようとする奴だよ。

ワイアット:(公民権運動ドキュメンタリーの)ジョージ・ウォレス知事※の役回り...あれが、あなたになるんだよ!

ショーン:そういう悪役は、こういうセリフを言うんだ...

ワイアット:『黒人は、白人の軍隊にはふさわしくない!』あるいは...

ショーン:『カソリックであることに反対するわけじゃないが...』

オリバー:『ホワイトハウスは電話でローマ法王の指示を受けることになるのか?』とか...

ジェイソン:『女の宇宙飛行士だって?胸についてる、そのデカいのがジャマになるんじゃないの?』

ワイアット:そのキャラが、あなたになるんだよ。で、ナレーターがこう言う...

オリバー:『ジョン・マケイン上院議員は、ことあるごとに反対を続けました。あからさまな引き延ばし策を使ってまで...』

ワイアット:もちろん、ナレーターにはジョンよりもっといい声の人を使うだろうけど。

オリバー:ほっとけ!

ワイアット:ちょっと言ってみただけ。

ショーン:とにかく、これはあなたの遺産の一部になるんだよ。

ワイアット:これから、悪くなるよ。

オリバー:間違いない、状況は悪くなる。

ジェイソン:どんどん悪くなる!

ショーン:どんなに悪くなるか、想像もつかないだろうね。

同性愛に対する差別だけじゃなくて、人種・民族差別にしろ男女差別にしろ、あらゆる差別の撤廃には強力な反対がつきものだと思うけど、反対する人たちに、「見ていてごらん、結局は差別は撤廃されて、これからは状況は(あなたたちにとっては)どんどん悪くなるんだから!」...いいなあ。こう言ってやりたい人たち、日本にもたくさんいますね。

前に、保守派の人とのインタビューで、ジョンが「同性婚こそアメリカの伝統だ」と言っていたのを思い出しました。つまり、奴隷制廃止から始まって、婦人参政権公民権運動もフェミニズムも、そのたびに大モメにモメながらも、少数派の権利を認める方向で進んできたのがアメリカの歴史で、現在モメている権利のフロンティアは同性愛者の結婚の権利だから、次はそこへ行くのが「アメリカの伝統」なんだと。

そういうところが、好きだなあ。

Gleeのカロフスキー: Glee部のメンバーをいじめる乱暴なフットボール選手のひとりで、なぜか特に執拗にカートをいじめるというキャラ。

※Don't ask don't tell:アメリカ軍の所属兵士は、ゲイであることを明らかにしてはならない(オープンにすると除隊になる)というポリシー。

ジョン・マケインとデイリーショー:以前にも書きましたが、2008年に大統領候補になる以前は、ジョン・マケインは「friend of the show」で、頻繁にゲストに来ていました。ジョンは、ベトナム戦争で5年間も捕虜生活をサバイバルし、議員としては共和党の方針に反することでも自分の信念をはっきり言う「マーヴェリック(一匹狼)」と呼ばれたマケインを尊敬していたようです。しかし、2006年頃から、彼は大統領候補になるために共和党支持層の保守派に妥協した言動が多くなり...それでも、「番組の友」であることは変わらず、よくゲストで来てイラク戦争などに関してジョンと激論を交わしていたのですが...サラ・ペイリンを副大統領候補に選んだことがジョンにとって「ロバの背骨を折る最後の一本の藁」になったのか、番組での彼の扱いは一気に辛辣になりました。以来、マケイン議員は一度もゲストに来ていません。

※ジョージ・ウォレス:1960年代〜80年代のアラバマ州知事。黒人の権利を求める公民権運動と人種統合に最後まで断固反対し続けた、徹底した人種差別主義者。連邦政府の命令でアラバマの大学が黒人学生を受け入れた際、州兵を動員し、自ら校門の前に立って黒人学生の入学を阻止しようとしたことで有名。