Let’s 差別用語!(先週のThe Daily Show with Jon Stewart)

The Daily Show with Jon Stewart 2010/8/24 The Hurt Talker

見た時から面白いと思って、紹介したいと思っていたセグメントですが、今日Twitterがきっかけで「俺にはXXの友達がいるからXX差別じゃない」というよくある台詞について考えていて、思い出したので一気に訳してみました。

普通だったら「ピー」音の入る「Nワード」(黒人に対する差別用語)を、あえて検閲せずに出したことで話題のセグメントです、が、私は一応伏字にしました。日本語の分からない人が検索でひっかけて誤解するといけないので...念のため。

ラジオの人生相談番組のホストで、バリバリ保守派で有名な「Dr.ローラ」が、人種差別発言をしたことで騒ぎになったことに関するセグメントです。

ジョン・スチュワート:今日は、すべてのアメリカ人を、国民として団結させる一つの共通点について話そう。あなたがどんな人種、どんな宗教信条、どんな性的指向であろうとうも...あなたたちを表現するとっても侮辱的な言葉が必ずひとつはあるってことだ。これが、我々の共通点だ。あと、誰でも必ずマスターベーションすることかな。

でも、差別用語はいろいろあるが、永遠のチャンピオンは何と言ってもNワードだ。だから、ラジオ番組ホストのDr.ローラ・シュレシンジャーが、リスナーの電話に答えたこの言葉は世間にショックを与えた。

Dr.ローラ・シュレシンジャー:Ni**r, n**gr, n*g*r!

ジョン:....呪文を間違えてるね。3回言うのは「ビートルジュース」だよ。いや、これは「文脈を外している」ってやつだね。ちゃんと前後の文脈を聞いてみないと。

Dr.ローラ:Ni**r, n**gr, n*g*r、こればっかり!

ジョン:OK、あー...Dr.ローラが答えていた電話は、白人の夫のいる黒人女性が、夫の白人の友達が彼女に人種差別的な言葉を言うので、どう対処したらいいか相談していたんだ。

Dr.ローラ:いい、思いつきで言ってしまうとね、多くの黒人たちは...

ジョン:あー、ちょっと待って。こういう質問にはね...思いつきで答えちゃいけないんじゃないかなあ。そうじゃないと、とんでもない差別用語を、広域放送のラジオ番組で繰り返してしまうはめになりかねないよ。

Dr.ローラ:多くの黒人が、半分黒人だからってだけでオバマに投票したわ。黒人が大統領になって以来、以前より人種差別だって文句を言う人が増えたわ。まったくお笑いよ。私のボディーガードで、私の親友である人は、黒人よ。いいから聞きなさい。何度でも言うわ。HBOとかで黒人コメディアンの番組を見ていると、「Ni**r, n**gr, n*g*r」こればっかり!私は誰かをnig**rと呼んだことなんかないわ。もし、あなたが人種についてそんなに過剰に繊細で、ユーモアのセンスがないんなら、人種の違う人と結婚なんかしないことね!

ジョン:結婚式の誓いの言葉に入れるべきだった?「汝、物分かりのよい黒人女性はこの白人男性を正式な夫とし、その友達があなたをnig**rと呼んでもいちいち文句を言わないことを誓いますか?」(N-ワードを言ってしまった後に、口の中が汚れたように舌を出して)...いい気分じゃないね。

うー、明らかに侮辱的な冗談を言って、相手が怒ると「ユーモアのセンスがない」という人って大嫌い!センスがないのはおのれじゃ!

この発言が問題となり、Dr.ローラ(ほんとはドクターではないようですが)の番組からはスポンサーが降りてしまい、局から苦情が出たようです。(そりゃそうですね。)でも、Dr.ローラは、そのことを「私の言論の自由が阻害された」として、ラジオ番組をやめてしまいました。あのなあ、あなたの意見をガンガン批判することも、反対を表明するためにスポンサーを降りることも、言論の自由を妨害することじゃないよ!まあ、辞めるのは勝手だけど。

ジョン:一体この世の誰が、これほど「言論の自由」を勘違いしていて、自分の意見を聞いてもらうのによい方法が「仕事を辞めること」だと思うんだ?!

キャスター:サラ・ペイリンが、Dr.ローラ・シュレシンジャーの弁護に乗り出しました...(※)

サラ・ペイリンTwitter:Dr.ローラ、退却しちゃだめ、弾を込めなおすのよ!彼女を黙らせようとする活動家たちのせいで、彼女の言論の自由がなくなっている。こんなのアメリカ的じゃないわ!フェアじゃないわ。

サラ・ペイリン...相変わらずだ。アタマイタイ...

ジョン:わかりやすいように、Twitter風に言ってみようか。「言論の自由は、批判されないことも、ラジオ番組も保証してないよ。被害者ぶりっこ、サイテー!Dr.ローラ・シュレシンジャー、あんたなんて...」おっと、文字数オーバーだ。

はっきりさせようか。サラ・ペイリンは、差別用語を使ったからと言って、辞職するように圧力をかけられるのは不当だと主張している。これが、どうして妙に思えるのかなあ...

キャスター:元知事のサラ・ペイリンは、オバマ大統領に首席補佐官のラーム・エマニュエルの解雇を要求しています。昨年の戦略会議で、補佐官は民主党内の左派グループを「f**king retarded」(※)と呼んだからです。

ジョン:サラ・ペイリンは偽善的なのか?それとも、Rワードは、Nワードより悪いのか?これについて、ワイアット・セニャックとジョン・オリバーに聞いてみましょう。
ワイアット:Ni**erは、retardよりずっと悪い!

ジョン・オリバー:何だって?retardの方がずっと悪いよ。

ワイアット:何より悪いの?

オリバー:えーっと...つまり、君の方の言葉より。

ワイアット:悪くないんなら、言ってみたらどう?

オリバー:言いたくないよ。もう何度も言ったから、飽きた。

ワイアット:君は、こっちの方が悪いと認めているんじゃないか。

ジョン:ぼくは、両方の言葉を今使ったばかりだけど...

オリバー・ワイアット:何だって?何てやつだ!最低だな!

ジョン:ぼくは、悪いのは差別的な考えであって、言葉そのものにこだわりすぎるのはよくないって言いたかったんだ。どの言葉を使ったかじゃなくて、何を言ったかという全体の文脈が肝心だろう?

オリバー:わかるよ。でも、Dr.ローラは...この言葉を、傷つけるために使ったのじゃないと思う。

ワイアット:その通り!問題は、彼女が言った他の人種差別的なアホなタワゴトの方だよ。【観客喝采

オリバー:違う!彼女が人種差別主義のはずはない。彼女には黒人のボディガードがいるんだから!

ジョン:でも、メディアはNワードばかりを報道して、彼女が白人と結婚すべきじゃないと言ったことはほとんどだれも知らないじゃないか。

オリバー:ラーム・エマニュエルが誰を「retarded」と呼んだか憶えてる?

ジョン:...Dr.ローラ・シュレシンジャー?

オリバー:ぼくも憶えてない。憶えているのは言葉だけだ。R-ワードの力は、それほど強いからだ!

ジョン:でも、どの言葉をどれだけ悪く感じるかは、人によって違うだろう。サラ・ペイリンには障害のある子供がいるから、Rワードをより悪く感じる正当な理由がある。もし彼女に黒人の子供がいたら、Nワードにも違う感じ方をするだろう。

ワイアット:ああ。彼女の旦那さんも、いくつか正当な質問をしたいだろうね。でも、そうであっても、ぼくはDr.ローラにをより失礼に感じる。彼女はNワードを11回も言ったんだ!ラーム・エマニュエルはRワードを1回しか言っていない。

オリバー:何言ってるんだ。君だって、取引相場は知っているだろう?

ジョン:取引相場?

オリバー:Rワードの現在の相場は、13.5Nワードだ。これは「ペイリン指標」と呼ばれていて、侮辱のナスダックだよ。ちょっとティッカーを表示して。(NGR、JAP、FAGなどの「相場」が流れる)ジョン、気がついた?k*ke(※)の相場は3 1/4上昇したよ。

ワイアット:ああ。メル・ギブソンが注文したピザが遅れたんだ。(※)

ジョン:ちょっと待って。いまのはわざとだな。言った時、目が輝いていた!

オリバー:何?ただky*eって言っただけだよ。これ、悪いの?Jewっていうよりいい言い方だと思った。

ワイアット:Tシャツを作ったら?

N-ワードは「黒人自身が使えばOK」という不文律が一部にはあるらしく、ヒップホップのアーティストやコメディアンは盛んに使っていますが、それをいやがる黒人もいて、問題になっています。しかし、とにかく、黒人以外の人が使うのは絶対に問題外。

でも、私も、このDr.ローラの発言で問題なのはNワードを使ったということではなく「白人に侮辱的な事を言われても我慢できないんなら白人と結婚するな」というこの考え自体だと思います。特に、侮辱されて怒ることを「ユーモアのセンスがない」というのは最低です。「私にも黒人の友達がいるけど、私の友達は気にしない」っていうのも、いかにも最低。

ユダヤ系への蔑称であるKワードですが、こちらはNワードと違ってユダヤ系同士でも使われることはありません。テレビで聞くことなんてまずないので、ドキっとしますね。

ジョンは大学でサッカーやってた頃、ファウルをめぐる試合後のケンカでこう呼ばれて、相手をフィールド中追いかけた、それが今までの人生で最後にやった腕づくのケンカだった、と話していました。ジョンはそういうタイプには見えませんが、それほど言ってはいけない言葉だということ。

サラ・ペイリンは副大統領候補時代、自分の発言をマスコミが批判することを「言論の自由の妨害」と呼んだ。また、「アメリカとアラスカにもっと貢献するために」と言って知事を辞任した。

※retarded:以前は、知的障害者を指す言葉として使われていた。現在でも「愚か」という意味でこの言葉を使う人は多いが、差別用語であるという認識が多数になってきている。

※ki*e, ky*e:ユダヤ系に対する蔑称。

メル・ギブソンが酒酔い運転で逮捕された時、ユダヤ系への蔑称を叫びまくっていたのは有名。