【映画感想】トイ・ストーリー3 ☆☆☆☆1/2

PIXERの映画は、どれもこれも当然のように素晴らしいけど、その中でも「トイ・ストーリー」シリーズはまた特別である。「(PIXERの)原点にして頂点」という、他の映画が使ったらいささか大げさな宣伝文句も、この映画なら「ちょっと控えめすぎ」に思えるほど。

とにかく、映像はもちろんのこと、テーマとストーリーとその構成、主人公からチョイ役に至るまでのキャラクター、声優たちの演技(吹替え含む)、演出のスピード感、音楽、しゃれっ気のあるセリフ、細かいギャグやパロディ、どこをとっても一点非の打ちどころがない。この世に完璧な映画はないにしても、およそもっとも完璧に近い映画、それがこのシリーズだ。

すぐれた映画には、「インセプション」のように「今までになかったような新しい方向性にチャレンジする」タイプと、「ハングオーバー」のように「特定のジャンルに属し、そのジャンルに求められるものを不足なく満たす」タイプがあるが、「トイ・ストーリー」シリーズはその両方を同時に成し遂げているのだ。

PIXERの映画はいつも、あくまで子供向きの純粋な楽しさと、「子供に分かるのか?」とも思ってしまうような深いテーマの両方を持っているが、「トイ・ストーリー」シリーズはその点でもまた、特別製に素晴らしい。

また乱暴なまとめ方をすると、「1」は「そう、あなたは自分が思っているほど特別な存在じゃない。それでも人生、捨てたもんじゃないよ」という話だった。「2」は、「ガラスの箱の中で安全に一生を過ごすより、いつか傷ついて捨てられてボロボロになると分かっていても、愛し愛されて生きるべきだ」という話だった。「3」のテーマは...「どんなにかけがえのない絆であっても、終わったら前へ進め。」

PIXERの映画のメッセージはストレートで、子供向きとは思えないほどシビアで、残酷なまでに前向き。そこがすばらしい。