And the winner (of the Iraq War) is...(ちょい前のThe Daily Show

今週はThe Daily Show with Jon StewartもThe Colbert Reportもお休みです。寂しいけど、休みのときこそブログを書こう。

というわけで、ちょっと遅くなりましたが、The Daily Showの恒例アカデミー賞ネタ。

アカデミー賞ネタと言っても、今年のアカデミー賞は、視聴率はよかったものの「全体に退屈だった」という評価のようです。なので、去年までのような「司会をジョンと比較して褒め称える」という自虐ネタもやりにくいし、特におちょくりがいのあるような面白いこともなかったようですが...

まあ、例外は短編ドキュメンタリー映画賞の「マイク強奪おばさん」ですけど。この女性、映画の製作途中で監督とケンカ別れしていたプロデューサーらしいけど、監督が喋っている途中で見事なインターセプトぶり。「退屈な授賞式を救った」と、逆に感謝されちゃっているみたいですけど(笑)。

でも、このオバサンをただからかうだけなら他の深夜トークショーと同じ。そこはさすがはデイリーショー、ちょうど時期がイラクの選挙と重なったことにひっかけて、とってもデイリーショーらしいアングルで料理してくれました。

The Daily Show with Jon Stewart 2010/3/8 Arabian Rights

ジョン・スチュワート:イラクにとって、二度目の民主的な選挙だ。イラクの歴史上、もっとも腐敗していない選挙と言われている。

ニュースキャスターたち:全土で、投票所への攻撃が相次ぎました...手榴弾が投げ込まれ...バクダットだけで、15箇所の投票所が爆破され...

国連特別代表:数人の候補者が暗殺されたようです。

スチュワート:なんてことだ。これが投票日?つまり、別の言葉で言えば...

ニュースキャスターたち:この選挙は、おおむね成功を収めました...プロセスは成功です...大きな成功と言えます。

スチュワート:...「選挙の成功」の基準が、著しく下がっていることがよくわかるのは、暗殺された候補者の数が、はっきりした数じゃなく、「数人(a few)」と表現されるってことだね。「ああ、候補者は何人か死んだよ。二人よりは多いけど、片手まではゆかないかな...」

ニューズウィークが、イラクの選挙を総括している。

ニュースキャスター:イラクに侵攻してから7年後、ブッシュ前大統領が正しかったことが判明しました。(ニューズウィークの表紙:ついに勝利〜民主イラクの出現)

スチュワート:何だって?!9・11とは何の関係もない国に、ありもしない大量破壊兵器を探すために侵攻してから7年経って、イラクの人たちに言うことは、「どういたしまして!」だけ?

ジョン・オリバー特派員が、イラクから選挙をレポートします。

まるでアカデミー賞のようなタキシード姿の、ジョン・オリバー:ワオ、ワオ!やった!やったよ、ジョン!信じられない!ぼくら、勝ったんだね!(※1)みんな、ぼくらが好きなんだね!(※2)ほんとうに好きなんだね!

スチュワート:ジョン、イラクの人々がわれわれを好きだとはとても...

オリバー:ジョン、黙って。感謝しなきゃならない人がたくさんいるんだから。最初に、共にイラクに侵攻してくれたみなさん。イギリス、ちょっとだけスペイン、ポーランドは数週間、あとパラオと...モロッコ!忘れちゃいけないモロッコ!すばらしい地雷除去猿軍団のみなさん、ありがとう!みなさんのおかげです!

スチュワート:ジョン、ジョン!自分のせいで起きた災厄について、自分をほめたたえるっていうのは...

オリバー:ジョン、なんでまだ、そうネガティブなんだ!うれしいことに、今夜は君らの夜じゃない。われわれのための夜だ!だから、BBC、くたばれ!ニューヨーク・タイムズ、くたばれ!ただしジュデス・ミラーを除いて。あなたはくたばらなくてもいい。(※3)特にスチュワート、あんただ!あんたと、あんたら深夜テレビのフーリガンたち、くたばれ!あんたらの批判を聞いていたら、ぼくらはここまで来れなかった!

スチュワート:ポイントはそこだよ。そうしていたら、われわれはそこには行ってなかった!

オリバー:黙れ。(涙声で)今夜は、夢を信じる人々のための夜です。勇敢で、想像力豊かな、ジョージ・ブッシュ、ディック・チェイニー...(拍手を始める)この戦争は、あなたたちのものだよ!

スチュワート:誰も拍手してないよ。

オリバー:拍手するべきなんだ!舞台裏のスタッフたちもわすれちゃいけない!ブラックウォーター、ハリバートンケロッグ・ブラウン&ルート(KRB)、すべての関連会社、みんな、やったよ!イェイ!あー、頭が真っ白だ。誰か忘れてないかな。あっ、軍隊!あやうく忘れるところだった、アメリカの軍隊!

サマンサ・ビーが突然登場:ま〜ったく、いつも男が喋るのよね!しかもイギリス男!この男は、ほとんど取材してこなかったのに!やったのは私よ!私!

オリバー:いいから引っ込めよ、サム!受賞スピーチに割って入るなんて、なんて下品なクソ女だ!(サイレンの音)ああ、だめだめ、まだ音楽にはゆかないで!スピーチが終わっていないんだから!

スチュワート:ジョン、それはオーケストラじゃなくて空襲警報だよ!

オリバー:ちょっと待って、まだ感謝していない人が...CIAに感謝します。全員に...法務長官たちにも。アッシュクロフト、ゴンザレス、ユー...あなたたちがいなかったら、われわれは国際法を守らなきゃならなかった!あなたたちは最高だよ!あと、何を言えば...(手を広げて)ぼくらは世界の王者だ!(※4)

スチュワート:だめ、だめ!その言葉は使っちゃだめだって!嫌われるよ!

オリバー:くたばれスチュワート!かまうもんか!

※1 We won! 英語では、「勝った」と「(賞を)受賞した」は同じ言葉になる。

※2 サリー・フィールドが二度目に主演女優賞を受賞した時、「みんな、ほんとに私が好きなのね!(You really like me!)」というスピーチを行い、たいへん評判が悪かった。

※3 ジュディス・ミラー バレリー・プレイム事件(CIAリーク事件)参照。

※4 ジェームズ・キャメロンが「タイタニック」で11部門のアカデミー賞を受賞した時、映画の中のディカプリオの真似で「ぼくは世界の王者だ!」と叫び、たいへん評判が悪かった。一部には、今回「アバター」が取れなかったのはこのスピーチのせいだと言われているほど。(そんなことはないと思いますが。)

しかし、イラク戦争のことでアメリカが「われわれは世界の王者だ!」なんて叫んだら、そのヒンシュクぶりはジェームズ・キャメロンどころじゃないでしょうね...