【映画感想】プリンセスと魔法のキス ☆☆☆1/2

「知っての通り、世界を支配している力は魔術じゃない、金だ!」〜ドクター・ファシリエール

「もうちょっと深く掘ってごらん!(Dig a little deeper)」〜ママ・オーディ

ディズニーが、史上初のアフリカ系ヒロインで「王女とカエル」をアニメ化するというニュースを聞いた時は、「あら、ディズニーアニメのヒロインって、アジア系(ムーラン)もネイティブ・アメリカンポカホンタス)もアラブ系(アラジン)もいたのに、黒人ヒロインはいなかったのね。それはいい加減、作った方がいいと思うけど、しかし何で『王女とカエル』??」と思ったものです。こんな単純な話をどう料理するのか想像もつかなかったし、正直、ヨーロッパのおとぎ話を、そのまんま登場人物の顔だけアフリカ系にするという感じを想像していたので...

でも、実際に見てみて「なるほど!」と感心しました。テーマも、ストーリーも、音楽も、ニューオリンズが舞台であるということをキーにつながっていて、単に政治的に正しいからっていうんじゃなくて、ちゃんと黒人ヒロインでなくてはならないようになっている。

1920年代が舞台になっているけれど、このストーリーのインスピレーション源って絶対、ハリケーンカトリーナだよね。ママ・オーディの住処である、木の上に乗っかっている船は「洪水」を表しているし。貧富の差ってものをひしひしと感じさせたあの災害...

この映画、ジャズはもちろん、ベニエなどの名物料理、マルディ・グラ、バイユー、ケイジャン訛りで喋るホタル(笑)と、名物を並べたニューオリンズ賛歌になっているのだけど...そういうことだけじゃなくて、社会の不公平や格差の問題も、それに負けないエネルギーや希望もちゃんと描いていて、軸のしっかりしたストーリーになっているところに感心しました。

昔が舞台で、アニメの絵柄は古風でも、スピリットはしっかり現代を反映しているんだなあ。

王子様の性格が「最初は軽薄で、しっかり者のヒロインに影響されて変わる」というあたり、私は「Wicked」のフィエロを思い出したのですが、これも最近の傾向ですかね。

私、ディズニー独特の擬人化された動物のアニメ表現っていうのは、実はまあそれほど好きではなくて、だからこの映画は「カエルの部分が意外と長い」ってところが私的にはちょっと難点ではあるのですが...

でも音楽は期待通り良かったし、なにより教訓的テーマのしっかりしたブレない展開が、ディズニーらしくていいなあ。PIXERの映画みたいな「すごいなこれ。こんなに深くて、子供に分かるのか?」というところはなくて、あくまで子供向きを貫いているのですが、それはそれで良いです。

カエル嫌いでなければ、おすすめです(笑)。