リストパワーでアカデミー賞

昨日のアカデミー賞で、「ハート・ロッカー」のキャスリン・ビグロー監督が監督賞・作品賞を受賞したことは、もう皆様ご存知ですよね。

キャスリン・ビグローといえば、キアヌー・リーブスの出世作となった「ハートブルー」以来、娯楽アクション一筋。ラブコメ系やアート系が多い女性監督の中ではずっと異彩を放つ存在でしたが、ついに女性監督初のアカデミー賞受賞まできましたか。今の時代にまだ「女性初」があるのが驚きですが...

プロデューサーとして作品賞を受賞した女性は1970年代からいるのに、監督となるとこうまで女性が少ないのは、脚本やプロデュースと違って監督は現場仕事、肉体労働の側面が大きいからなんでしょうか。それと、女性監督が多いラブコメ系やアート系小品は、アカデミー賞の作品賞・監督賞を獲りにくいからでしょうね...とにかく、アカデミー賞も今更な「女性初」をようやく克服できて、めでたいことです。

でもそんなことより、私はもっとオタクな話がしたくてこのエントリーを書いているのでした(笑)。私はwowowを解約してしまったので、実はまだビグロー監督の受賞の瞬間を見ていないのですが、授賞式を見たスティーブン・コルベアのファンが「あれは、もしかして…?」と言っていたのが、彼女が左腕にはめている赤いブレスレットなのです。

http://www.imdb.com/features/rto/2010/gallery/10_oscar_show-rm2836172544

これは...未確認ですが多分、スティーブン・コルベアの「リストストロング・ブレスレットWriststrong Bracelet」ではないかと。

「リストストロング・ブレスレット」って何?...えー、説明すると長くなるのですが、ことの起こりは2007年7月、スティーブンが、番組収録前に転んで手首を骨折したことでした。

http://www.colbertnation.com/the-colbert-report-videos/90524/july-26-2007/how-did-stephen-break-his-wrist-

アッパレにも、骨折した後、彼はそのまま最後まで番組の収録を続けました。すごいよなあ。スタジオの彼が転んだ場所には、今でも床に人型の印がつけてあります(笑)。

で、骨折した後、「スティーブン」(<番組のキャラの方)は「手首の大切さに目覚め」、「ハリウッド映画の手首への暴力描写に反対する」キャンペーンとして、赤いシリコン製の「リストストロング・ブレスレット」を売り出したのです。

http://www.colbertnation.com/the-colbert-report-videos/183192/july-31-2007/wrist-violence-epidemic

http://www.colbertnation.com/the-colbert-report-videos/91799/august-20-2007/wriststrong-bracelets

ティーブン:お金はすべてチャリティに、意識の高まりは全て手首に、栄光はすべてぼくに!

これは何かと言うと...偉大なる自転車レーサー、ランス・アームストロングが癌にかかった時、癌と闘病する人を支援するために作った「リブストロング(live-strong)ブレスレット」のパロディです。

http://www.jsports.co.jp/cycle/livestrong.html

ランス・アームストロングは何度か「The Colbert Report」のゲストに来ているので、パロディにする許可はちゃんと得ていると思いますよ。

http://shop.comedycentral.com/?v=comedy-central_shows_the-colbert-report

↑ここで売ってます。7.5ドル。

もちろん「手首に対する暴力に反対する」というスローガンは冗談ですが、パロディとは言え「リストストロング・ブレスレット」もちゃんとチャリティーになっていて、収益は「Yellow Ribbon Fund」に寄付されます。「Yellow Ribbon Fund」は、アメリカ軍の傷病兵を支援するチャリティ団体です。

http://www.yellowribbonfund.com/

以来、スティーブンは番組でもイベント出席でも、どこにゆくにも必ずこのブレスレットをしています。番組ではいつも観客にいくつか飛ばしていますし、ゲストにもプレゼントしているようです。これをもらった人は、必ずこれを「自分より有名な人」にプレゼントしないといけないということです。

でも、オバマ大統領もこのブレスレットを持っているのですよね。それより有名な人って、もういないんじゃ...(笑)

さて、キャスリン・ビグロー監督は、「ハート・ロッカー」公開時に「The Colbert Report」のゲストに来ていましたので、ブレスレットはもらったはずです。

http://www.colbertnation.com/the-colbert-report-videos/240245/july-30-2009/kathryn-bigelow

ビゲロー監督:これは、誰もがそれから全速力で逃げるものに向かって歩いてゆく人間たちの話です。実在の人物を元にしていて、実際に彼は、1日に10回〜15回、爆弾を処理していたのです。その経験をそのまま映画にするだけで、何も付け加える必要はありませんでした。

ティーブン:この映画の舞台はキャンプ・ビクトリー周辺ですよね。ぼくはこの間、キャンプ・ビクトリーに行ったばかりですが、この映画にはぼくは出てきませんね。リアリティがないんじゃないですか?兵士たちはみんなぼくの噂をしていたはずですから。

ビゲロー:(困惑して)えー、これは2004年の話ですから...でも、噂はしていたかもしれません...

ティーブン:2004年?ああ、それならわかります。...あなたは「ハートブルー」以来、いつもアクション映画を作ってきましたね。どうして、ここらで少し落ち着いて、ダイアン・レインが二度目の恋を見つけるような映画を撮らないのですか?

ビゲロー:あなたが脚本を書いてくれたら、撮るかもしれませんよ。私はどんな映画にもオープンです。でも、私は危険な状況により惹かれるのです。

ティーブン:ぼくとのインタビューという危険な状況はうまく乗り越えたようですね。

アカデミー賞でしていたのは、このブレスレットが戦場で傷ついた兵士に対するチャリティになっているからでしょうね。映画の内容と関係ありますから...