オーブリー&マチュリン「21」(その25・終) 


「喪に服するH.M.Sサプライズ号」パトリック・オブライアン追悼 2000年1月

前回の決闘の後、「大恥をかいたミラー大尉は旗艦のキャビンに閉じこもり、めったに顔を見せなくなった」という噂話を、キリックがミラーの召使から聞きこんで、大喜びでサフォーク号内に広めている...というところで、オブライアン氏の遺稿は途切れています。

この、最後のエピソードが意味するところは、スティーブンはもうほぼ間違いなく、クリスティーンと結婚するということでしょうね。お幸せに...

途中で遺稿が途切れてしまったのは本当に寂しいのですけど、反面、こうしてジャックの家族もスティーブンの家族も一緒にいるところで終わっているのは、なんだか嬉しいです。この後、家族も一緒にずっと航海を続けたような気がするのですよね。

「21」の本には、この後リチャード・スノーによる「あとがき」があり、裏表紙はジェフ・ハントによる上のスケッチになっています。このスケッチに添えられた文章を訳して、「21:The Final Unfinished Voyage of Jack Aubrey」の紹介の締めくくりとしたいと思います。

「この『愛しのサプライズ号』の小さなスケッチを、追悼のために捧げたいと思う。エリュシオン海(※)のどこかを航海していたオーブリー艦長は、しばしの間錨を下ろし、彼の創造主に礼砲を捧げることにした。海軍のしきたりに従い、ヤードは傾けられ、旗と三角旗は半旗に垂れさがり、大砲は礼砲の音を轟かせた。艦上ではおそらく、総員の点呼が行われ、皆が黒を身につけ、剣は逆さに掲げられ、葬送行進曲が演奏されたことだろう。しかし、長くは続かない。捕まえなければならない潮があり、利用しなければならない風がある。彼女は、一刻も無駄にできないのだ。彼は逝ってしまったかもしれないが、サプライズ号と彼女のおなじみの乗員たちは、我々の心の中を永遠に航海し続ける。」〜ジェフ・ハント 2000年1月

※Elysian Seas:Elysianはギリシア神話に登場する死後の楽園で、神々に愛された英雄たちの魂が暮らす世界。