旧友(先週のThe Daily Show with Jon Stewart)

先週の木曜のThe Daily Showのゲストは、ニューヨーク州第9区代表下院議員、アンソニー・ウィナー氏(民主党)。彼は、ジョン・スチュワートが政治献金したことのある唯一の政治家なのです。

なぜなら...彼はジョンの元ルームメイトだから(笑)。

正確に言えば、ジョンのルームメイトだったのはウィナーさんのガールフレンドで、当時まだ親の家に住んでいたウィナーさんはジョンたちの部屋に入り浸っていたとか。なんか、フクザツな関係みたいに聞こえますが、男と女のルームメイトって別に珍しくないようですね、アメリカでは。

とにかく、彼らは若い頃からの旧友で、今でも友達関係を維持しているようです。でも彼をゲストに呼んだのは、別に思い出話に花を咲かせるためではなく、ウィナーさんが今、医療保険制度改革でがんばっているからなんです。

The Daily Show with Jon Stewart 2010/2/4

旧友なのに、国会議員であることに敬意を表してか、ウィナーさんが登場した時ジョンはちゃんと「Sir!」と呼んでるのね。

ジョン・スチュワート:我々は80年代から知り合いで、一緒にビーチに行ったこともある仲だ。はっきり言って、ぼくがその気になれば、君の政治生命を断つこともできるんだけどね。

アンソニー・ウィナー:「人を呪わば穴二つ」って言葉知ってる?

スチュワート:君もぼくの写真を持っているって...

ウィナー:いろいろとね。

スチュワート:国会議員としての成功おめでとう。80年代には、君は大した人間には思えなかったから、驚いたけど...

ウィナー:君は80年代には面白かったんだけどね。

ウィナーさんは、メディケアの範囲拡大(Medicare Buy-in)を提唱しています。メディケアというのはアメリカの65歳以上を対象とした公的保険。日本やヨーロッパ各国で全国民に採用されている公的保険と似たような制度で、ただ65歳以上のみを対象していることが違い。比較的成功していて、加入者の満足度も高い制度だそうです。

だったら、メディケアの年齢制限を下げるかなくして、失業者や学生や既往症があるために民間保険に入れない人がメディケアに加入できるようにしたらいいんじゃないか。一番単純明快な解決法じゃないか、というのが趣旨。

ところがこの提案「メディケア・バイ=イン」は、無所属の大物議員ジョー・リーバーマンの大反対で、医療保険改革法案からは除かれてしまいました。

スチュワート:リーバーマンは、君が熱心にメディケア・バイ=インを推進しているから、君を名指しで非難して、これを引っ込めない限り法案には絶対反対だと言った。聞きたいのだけど...彼はクソヤロー(dick)かな?

ウィナー:...その通りだよ、ジョン!【観客爆笑】

ウィナー:メディケアは開始から40年たって、成功している制度だ。事務経費は1%にしかなっていない。一方、民間医療保険の事務経費は30%だ。65歳以上の人じゃないと加入できない理由はないんだ。45歳でも、55歳でも...単純な解決法だ。55歳の人に、明日からメディケアに加入できると言ったら、大喜びするだろう。これは政府が運営する制度の中でも成功しているもののひとつなんだ。それなのに、オバマ大統領も含めて多くの人が、「政府が医療保険を運営するのはよくない」という考え方に陥っている。

スチュワート:それが理解できないところなんだ。アメリカには、メディケアも、メディケイド(貧困層のための医療制度)も、社会保障制度もある。いずれも政府が運営していて、比較的成功していて、受け入れられている。なのに、それをモデルにして医療保険制度をやろうとすると、「それは資本主義の原則を根底から覆すもので、スターリン主義だ」となる。

ウィナー:メディケアができた時もそうだった。アメリカの制度を根底から覆すものだと言われたものだよ。共和党員との議論にあまりに飽き飽きしたんで、「それでは、メディケアを廃止しましょうか」と言ったんだ。そうしたら彼らは、とんでもないことだと大反対した。それなら、どうしてメディケアの範囲を拡大できないんだ?学校を卒業して、親の保険から離れなきゃならなくなった若者が、メディケアに加入できたっていいじゃないか。失業した(職場の保険を失った)人々がメディケアに加入できたっていいじゃないか。それなのに、なぜかそれは「アメリカの社会制度の根底を覆すもの」だというふうに歪められてしまっている。

スチュワート:君とぼくが、喧嘩にならずにこんなに長く話せたのは初めてだね!...君がニューヨークの市長選に出馬すれば、ブルームバーグ市長に勝てたのではないかという話もあったけど。

ウィナー:ああ、ぼくならブルームバーグを、借りてきたラバみたいに引きずり回せたね!【観客喝采

スチュワート:そのラバ、いくらで借りられるの?高そうだ。

ウィナー:でも、医療保険改革の議論が佳境を迎えていて、こっちの方に情熱を感じているから。まだ、軌道に戻すことはできると思う。公的保険オプションは導入されるべきだ。人々は民間保険会社だけに依存すべきでない。保険会社の利益には制限をかけるべきだ。

スチュワート:君が、僕の知っている昔のアンソニー・ウィナーをどこに隠したのか知らないけど...今ぼくの前に座っている新しいアンソニー・ウィナーは、なかなか立派な男だね。

ウィナー:君こそ別人のようだよ。80年代と違って、ちゃんとズボンも履いているし。

スチュワート:当時はあれが流行っていたんだ!

保険制度改革への情熱のせいか、ウィナーさんはなかなか魅力的に見えて、The Daily Showのファンフォーラムでは「アンソニー・ウィナーが恋人で、ジョン・スチュワートがルームメイトだったなんて、そのラッキーな女性は一体誰なの?」なんていう書きこみもありましたが(笑)...私なら、逆の方がいいな。(<当たり前)