NY 断片的な旅行記(その14)In The Heights

旅行記」最終回です。(コレだけ書いていないのを忘れていました。)「The Daily Show with Jon Stewart」の収録の後に、TKTSで割引チケットを買って観たミュージカル。

月曜日にやっているミュージカルって限られているのですよね。コレか「Next to Normal」だったのですが...最終選択には、やはり「トニー賞ミュージカル作品賞受賞」がモノを言ってしまった(笑)。

えーと、私はこのミュージカルについてはあまり予備知識がなくて、いろいろカン違いをしていました。つまり、「黒人の若者が主人公の」「音楽はヒップホップの」「Rentのような、若者コミュニティを描いた現代的な青春もの」だと思っていたのです。

ところが観てみると、「ラテン系の若者が主人公の」「音楽は主にラテンの(ヒップホップ+ラテンの組合わせもあり)」「Rentとはまったく似ていない、おばあさんや中年も登場するご近所を描いた昔風の下町人情物語」でした。

とにかく、全員がノリノリのラテン音楽で踊りまくるシーンが多くて、楽しかったです。まあこの、私はどっちも詳しいわけじゃないですが、ヒップホップよりラテンのノリの方がなんとなく好きなのは、ラテンの方が色っぽいからじゃないかな、とか思いました。

音楽のノリの良さ、パフォーマーのエネルギー、ダンスなどは見事なもので、ミュージカルとしては申し分なく、トニー賞も納得なのですが...まあ贅沢を言えば、私の好みからいうと物足りない側面がひとつあって...それは「歌詞」なのです。

「Wicked」の感想で「ミュージカルでストーリーに文句を言うのは野暮だけど、私はやっぱりストーリーがしっかりしたものの方が好き」と書いたのですが、よく考えてみたら、それは単に「ストーリー」というより、歌詞なのですね。歌詞と台詞部分をあわせた「脚本」かな。私は映画は脚本で観るタイプなのですが、舞台ミュージカルでも同じで、ストーリー展開そのものは単純でベタであっても、台詞(歌詞)のひとつひとつにヒネリや個性やしゃれっ気や深みがあればOKなんです。

残念ながら、その点「In The Heights」はイマイチ。いちいちあまりにベタというか、例えば「自慢の娘が大学をドロップアウトしたと知って狼狽する父親」も、「美容室で下品な噂話をするオバサンたち」も、「夫のひとりよがりな行動にブチ切れる妻」も、これらの状況から人がぱっと思い浮かべるであろう、まさにその通りの言葉を喋る(歌う)のです。ちと、工夫が足りないというか...

実は今回観たミュージカルでは「Wicked」と「In The Heights」のCDを買って、MP3プレーヤーで聴いているのですが、「Wicked」の歌詞って、何度くりかえし聴いてもその度に「あっ、これはもしかして、こういう意味なのかも」という発見があるのです。Wickedは、聴けば聴くほどニュアンスに富んだすばらしい歌詞で、まあそれと比較するのも気の毒なんですが...「In The Heights」の弱点はそこかなあ。まあ贅沢な文句なんですが。

あ、「Wicked」の歌詞、特に「Defying Gravity(重力に逆らって)」については、後でしつこい分析を書くかもしれません(笑)。

文句をつけてしまいましたが、細かい理屈よりエネルギッシュな歌とダンス!という人にはオススメです。私もそういうの嫌いじゃないし。

曲の中で私が一番気に入ったのは「Piragua(かき氷屋さんの歌)」かな(笑)。