オーブリー&マチュリン「21」(その18) 

ジャックとスティーブンがそんな会話をしていると、旗艦に「オーブリー少将とドクター・マチュリンをディナーに招待する」という信号旗が揚がったので、ジャックはすぐに承諾の信号旗を返しました。

「スティーブン、明日、旗艦のディナーに行くことになったけど、かまわないかい?」「もちろんいいとも、マイディア...それに、提督からの招待では、ぼくごときがどう思おうが、関係ないのだろう?君もだけど。どちらにしても、いいかげん大人の男たちと会話したいと思っていたところだ。女の子たちのおしゃべりには...もちろん、愛してはいるが...カニだの、ヒトデだの、ただのゴミだのを拾って来ては『サー、ねえ、これ何だか教えて!』と、こればっかり聞かされていて...ジェイコブが早く帰ってくればいいのになあ。」

「それなら、砲撃訓練をしよう!どうせ、火薬が余っているし...砲撃訓練なら、子供たちをびっくり仰天させて、黙らせるのに十分じゃないかな。すぐに命令するよ。」

ジャックにとっては、何でも砲撃訓練をする理由になるのね(笑)。要するに、好きなのね。

そりゃ、子供たちは一時的にはびっくりして黙るでしょうけど、翌日にはもう「砲撃訓練がいかに凄かったか」ということをぺらぺらと喋り出すと思いますけど。

サフォーク号は、ジャックが赴任したばかりということで、ジャックのいつもの厳しい基準に見合うほどには砲撃が上達していませんが、もともと規律のいい艦なのと、サプライズ号のベテラン船乗りが何十人か加わったことで、かなりのレベルに達しています。

砲撃訓練を間近で見学したソフィーとクリスティーンと子供たちは、もちろん度肝を抜かれた様子。子供たちはもちろんですが、何度かフリゲートの砲撃訓練を見たことがあるソフィーも、戦列艦のスケールの違う轟音に驚いていました。それよりも彼女にとっては、自分の夫の指揮下にあるこの艦のものすごさ、この世界の凄まじさを改めてひしひしと感じて、ちょっと動揺しているようです。

クリスティーンは、アフリカの森を一人でウロウロするような人ですから、もちろん銃には慣れているのですが、こんなにでっかい砲が発射されるのを見るのはもちろん初めてで、ブリジッドの手をぎゅっと握りしめていました。

この二人は、まあ当然とはいえ、砲撃訓練はあまり好きでないようです。思い起こせば、クラリッサは15巻で砲撃訓練を見学した時、大喜びで興奮していましたね。ダイアナは6巻で砲撃訓練を経験していますが、残念ながら船酔いで伸びていたような。元気な時なら、好きなタイプだと思いますが...

ここで妙な方に話がそれますが(しかも「ハリー・ポッター」を知っている人じゃないとわからない話)、このシリーズに登場する4人の女性は、きれいに「寮」が分かれるなあ、とか考えたことがあります。つまり、ソフィー=ハッフルパフ、ダイアナ=グリフィンドール、クリスティーン=レイブンクロー、クラリッサ=スリザリンね。男性登場人物はといえば、主な人々はみんなグリフィンドールになっちゃうんですけど。(船乗り気質そのものがグリフィンドールだからね。)