NY 断片的な旅行記(その4)Wicked


土曜の夜はWicked。

ちょうどハロウィーンだったせいか、仮装して来ている人たちがいましたね。魔女の帽子をかぶった女の子の一団とか...いや、これはハロウィーンだからじゃなくていつもそうなのかも。あと、きれいな色のファーのケープに、お尻のところがストッキングみたいな薄い生地になったパンツの、なんともステキな仮装をした男性二人組とか。写真を撮れなかったのがくれぐれも残念です。(う、でもこれも仮装じゃなくて彼らの普段のファッションなのかもしれん...違うか。)

これもハロウィーンのせいか、子供の観客は意外に少なかった。でも少しはいました。うん、これを見に連れてきてもらえるんなら、「トリック・オア・トリート」できなくてもいいかも。

で、肝心の舞台ですが...私はこのミュージカル、日本版も含めて観たことがなかったのですよね。ストーリーも全然知らなかった。でね...ちょっと照れくさいのですが、全編、「うわ〜、次はどうなるの!!」という感じでハラハラドキドキしながら観ていました。いやマジで。

(「童心に戻って」とか言わないで下さいね、その言葉大嫌いだから。これが「童心」なら、私は常に「童心」なので戻る必要もないです。)

とにかく、エルファバが最初に登場した瞬間から感情移入しまくりでしたもの。

オズの魔法使い」は子供の頃にちゃんと読みましたし、ジュディ・ガーランドの映画は大人になってから観ていて細かいところまで覚えていたので、「オズ」のいろんなことの「どうしてそうなったのか」ということが見事に「つながる」度に「おお!」と感心したり。

私、ミュージカルはソング&ダンスさえ良ければ、ストーリーについてごちゃごちゃ文句を言うのは野暮だとは思っているのですが、それでもやっぱり、どちらかというとストーリーのしっかりしたミュージカルの方が好きなんだなあ。MGMミュージカルの名作でも、ストーリーは単純な「バンド・ワゴン」や「巴里のアメリカ人」より、ストーリーやキャラクターがしっかりしている「雨に唄えば」「いつも上天気」「踊る大紐育」とかが好きだったものなあ。

とにかく、「Wicked」の話は好きでした。差別に関する話であり、フェミニズム、友情、自己の確立、個性や違いを認め合うことの大切さ、善と悪の曖昧な境界、権力、群集心理、ものごとには両面があるということ...読み込んでいくときりがないのですが、それを小学生にもわかりやすいミュージカルにしているところがすばらしい。

オズの魔法使い」も好きだし、別段悪くないのですが...そういや「オズ」のドロシーは「東と西の魔女は悪い魔女で、南と北の魔女は良い魔女なのよ」と言われて、なんの疑問もなく「はい、そうですか」と受け入れていたような。

でも、その「良い・悪い」を決めているのは誰なのか。権力者なのか群集なのか。ある人が「悪い」と決めつけている心理には、「自分と異質だから」「外見が美しくないから」という偏見が混じっていないか。それを疑ってみた時、その先に広がる道のつらさ厳しさと素晴らしさ...

「Wicked」は、小学校高学年から中学生ぐらいのいわゆるTweenと呼ばれる層の女の子に人気があって、最初は親に連れてきてもらっても、後で友達同士や一人でリピートするティーンの女の子も多いようです。将来のミュージカルファンに育ってくれるんじゃないかとブロードウェイの希望の星になっているそうで。

そういう年齢でこの舞台に触れて育つって、素晴らしいことだなあ、と思います。