オーブリー&マチュリン「21」(その12)

最初に...前回、ソフィーからの手紙が何を言っているのかよくわからないのに、「ソフィーの書き方がわかりにくいから」とは言わないで、「自分がボーっとしているから」と、こんなところでもソフィーを庇っているジャックは、かわいいです。

で、クリスティーンからのもっと順を追った具体的な経過観察を読んだスティーブンの解説によれば...

ティーブンが航海に出てから、娘のブリジッドちゃんはずっと(誰より懐いているパディーンとともに)ウールハンプトンの「ウールコム・ハウス」(ジャックの屋敷)に住んでいるのですが、今ではそこにクリスティーンも滞在しています。ジャックの息子のジョージ君はすでに艦に乗っているのですが(まだ正式な士官候補生ではなく「志願者」という形だと思う)、艦が修理中のため休暇中で家にいました。その間、姉のシャーロットとファニー(双子)は、アイルランドにあるソフィーの妹が経営する寄宿学校に行っていて、家にはいませんでした。

ブリジッドちゃんには「頭が良くて有能な」ミス・ウエストという家庭教師がついていて、勉強しているようです。まだ学校へ行く年ではないので。あるいはずっと行かないかも。この時代の女の子は必ず学校へ行くとは限らなくて、ずっと家庭教師にみてもらう場合もありますからね。オーブリー家の双子の場合は、たまたまソフィーの妹が学校をやっているので行っているようなもので。

ジョージくんはもう艦に乗っているので、教育は英国海軍から受けることになるのですが、休暇中はブリジッドちゃんと一緒にミス・ウエストに算数を教わったりしているようです。そのお礼(?)としてミス・ウエストとブリジッドちゃんに艦で教わったロープの結び方を教えてあげたりしているようで。かわいい。

ところが、そうこうしているうちに、双子が予告なしで、予定より早く学校から帰って来ました。豪雨の中、長時間狭い郵便馬車に揺られて、ろくに食事も取れずに疲労困憊で帰ってきた双子は、ブリジッドが母親のそばの自分たちの席に、きれいな服を着ていかにも愛情を注がれている様子で座っているのを見て激怒。「あんた、まだいたの!なんでいつもいるのよ!」と口々に叫び、ブリジッドちゃんを椅子から突き飛ばそうとした...ところをジョージが勇敢に守った...ということのようです。

以来、双子はブリジッドちゃんに対して嫉妬の炎を燃やし続け、弟のジョージまでもがブリジッドの味方になっていることに腹を立て、ソフィーは板挟みで、立場上なりゆき上ブリジッドちゃんの親代わりになっているクリスティーンは双子の態度に腹を立て、ソフィーとクリスティーンの仲もなんとなく険悪になりかけ、すっかりストレスのたまったソフィーは双子の休暇の終わる日を指折り数えて待ち望んでいる、という次第。

しかし、ここで疑問に思ったのですが...オブライアンさんって、この子供たちの年齢を、それぞれいくつのつもりで書いているんでしょうかね??このシリーズは、例の「長い1813年」があるせいで、時間経過のつじつまを合わせることはとっくに放棄しているんですが...それにしたって、ジョージが艦に乗っているということは、少なくとも9〜10歳ぐらいにはなっていますよね。双子はそれより2〜3歳上ではなかった?12〜13歳にはなっているはずだと思うのですが。ブリジッドちゃんはずっと後に生まれているから、せいぜい6〜7歳ってところだと思うのですが...

高慢と偏見」に登場する妹たちのイメージで言えば、当時の13歳前後といえば、そろそろ将来の結婚相手のことを考えたり、男の子に興味を持ちだすような年齢ではないかと思っていたので、母親のことでずっと小さい女の子に嫉妬するというのは、年齢にしてはあまりに幼い感じで、ちょっと戸惑ってしまったのです。

うーん、でも、そういうことはまた別なのかな。特にオーブリー家は父親がほとんど家にいないから、母親への依存が強くなっていて、その母親と離れて暮らしている間に、家に別の子供が入り込んでいたとなったら...ちょっと、ショックで「子供返り」しているのかもしれない。

とにかく、このあたりは、オブライアンさんが露骨にブリジッドちゃんの方を贔屓しているのが感じられて、双子はなんだか「シンデレラのお姉さんたち」みたいな書かれ方で、私としてはちょっとシャーロットとファニーに同情気味になったのでした(笑)。