オーブリー・マチュリン「21」(その4)


カタールブレゲの広告。20巻「Bule at the Mizzen」の一節が引用されている。

原稿の3ページ目から6ページ目ぐらいまでは、例によって前巻のまとめ。

20巻のあらずじが、ざっと説明されています。その中で、前巻からの登場人物、ウィリアム王子の隠し子ホレイショ・ハンソン君のことも出てきます。そのカラミで、ウィリアム王子がスティーブンの患者だったことも説明されていて、それは前から何度も出てきていることなのですが...ここでの新情報(?)は、スティーブンが殿下の「さまざまな病気(ほとんどは不名誉なもの)」を治療した、と書かれていることです。「不名誉」って、性感染症とかですよね...そうだったんかい。

まあ、この頃の王子様は独身だったのですけどね。公認の愛人はいたけど。

このホレイショくんは、その愛人(王子との間に10人子供がいた)とは別の女性との間の子供で、公式に認知されていないし、ホレイショくん本人も王子が父親だとは知らないのですけど。でも王子は、ホレイショくんをことのほか可愛がっています。

なかなか有能な爽やか青年として描かれていて、もしもっとシリーズが続いていたら、第二のトム・プリングズくんみたいになった(するつもりだった)のかなー、とか思います。

王子はホレイショくんが出航する時、別れのプレゼントとして、1775年パリ創業の高級メーカー「ブレゲ」の懐中時計をくれるのですが、これがたまたまスティーブン愛用の時計と同じものでした。スティーブンはその後、その懐中時計をクリスティーンにあげてしまうのですが、同じものをまた買ったようです。この「21」でも、約束の時間を忘れていたスティーブンをホレイショくんが呼びに来ると、ちょうど二人の時計が同時に時を告げる、というシーンがありました。

で、冒頭の写真ですが...これは中東在住の方が送って下さった、「ブレゲ」のカタールの広告です。何百万もする高価な腕時計ですから、お金持ちの多い国でたくさん広告されているんでしょうねー。(私には別世界。)でも、そういう広告に、時計の格式を表すかのようにオブライアンの一節が引用されているあたり、オブライアンの小説自体がプレステージの高いものと見なされているような感じです。

ま、私にはまったく縁のない世界ですが(笑)。

このあたりでは、スティーブンは軍医助手の(諜報員仲間でもある)ドクター・ジェイコブと一緒にイルカの解剖をしていたり、嵐の過ぎた後に大量の鳥が甲板に集まってきたり、マゼラン海峡の自然を満喫しているようです。