オーブリー・マチュリン「21」(その3)

身長の話の続きですが、当時はヨーロッパ内の国による(民族的)差異のほかに、上流階級と労働者階級の身長差も大きかったようです。何世代にもわたる栄養状態の差ですね。ジャックがデカいのは、先祖代々いいもん食ってきた結果なんだ(笑)。スティーブンだって婚外子とはいえ両親とも上流の血統ですけど、半分カタロニア人なのと、あとは個人差ということで。ま、「中背」ですから。

今は階級による体格差なんてほとんどないでしょうし、EU各国の人的交流もさかんになって国別の差異も縮まっていると思いますが。少なくとも、身長6フィートの金髪男が南仏にいても「塔のように目立つ」ってことはないわな。

続く「スティーブンの顔色がdarkなのは日焼けしているからでムーア人(アフリカ系)の血が混じっているからではない」というのは、やや人種差別的と誤解を受けそうな(私はそうとは思いませんが)表現で、もしかしたら出版前に修正を求められていたかも...

あと気になるのは、非嫡出であることが「重荷になっていた」という文ですね。人種や宗教は現代でも大いに「重荷」になりうる問題ですが、こっちの方は現代ヨーロッパではまったく問題にならないようです。フランスや北欧ではもうすでに婚外子の方が多いそうですし、他の国でも(アメリカでも)30〜40%ぐらいになっているそうですから。(一方、日本の割合は2%だそうで、あまりの少なさにかえってちょっとショックだったのですが...)

最後に、「中背」と並んで最も気になったのは「40歳すこし前」というこれです。そ、そうだったんか!私はてっきり、とっくに40超えているかと思っていて、「感想」のあちこちにもその前提でいろいろ書いちゃってるんですけど。1巻が1800年で、その時ジャックは「20代の終わり」、スティーブンは30歳ぐらいだったから、「長い1813年」の間はずっと、スティーブンは43歳、ジャックは42歳、という前提で読んでいたのですけど...だいたい、この「21」は少なくとも1816年よりは後のはずで、その時39歳だとすると、フランス革命の1789年には12歳ってことになっちゃうじゃないですか!1789年にはスティーブンはパリで「医学を学んでいた」はずでは?天才少年ドギー・ハウザーっかっての!(すみません古くて...)

いえ、このシリーズは時間の流れをあまり細かく追及してはいけないことは分かってるのですけどね。まあ、日本の長期連載漫画の「いくら時代が流れても主人公たちはずっと高校二年生」というやつみたいなものだと考えればいいかと。(いいのか?)

うーん、「正編」が終わった後に、いろいろ「え、そうだったの?」がありますなあ。とにかく、オブライアンさんがスティーブンを「40歳前」の「中背」の「濃く日焼けした顔色の」男としてイメージして書いていたというのは意外なカンジであります。私は青白くて小柄で40過ぎの男をイメージして読んでいたので。でも、ちょっと違うイメージっていうのも新鮮だったりして、それはそれで悪くなかったりする...

ティーブンをさらっと紹介した文章ひとつで、ひっぱるひっぱる(笑)。