MR. USO(先週のThe Colbert Report)

先週はThe Daily Showもいろいろ面白かったのだけど(特に、ジョンがナポレオンの扮装をしたやつとか…これ、背景を話すと長いんだけど)、やはり先週のハイライトはこれでしょう。

The Colbert Report 2009/6/8

ティーブン・コルベア:ぼくの基礎訓練は見てくれました?ぼく、才能あります?

ゲストのオディアーノ将軍:スティーブン、君の訓練はあんまりリアリティがないね。

ティーブン:どうして?CGじゃなくて実際にやったんですよ。

将軍:そうじゃなくて、君のスタイルの問題だ。ヘアスタイルだよ。本当に入隊したいのなら、ここにいる男性兵士たちみたいに髪を刈り上げにしないと。

ティーブン:ちょっと待って下さいよ。髪がなくなったら、どうやってブローすればいいんです?

将軍:スティーブン、髪を切りたまえ。

ティーブン:失礼ですけど、将軍、あなたは床屋の宣伝マンとしては最悪ですよ。はっきり言って、四つ星の将軍(大将)に言われたぐらいでは髪は切りませんよ!【モニターから雑音】ジミー、いったい何だ?

オバマ大統領がモニターに登場】

オバマ大統領:将軍?

将軍:大統領!ようこそ!

大統領:最初に、イラク駐在の兵士諸君に挨拶を。アメリカ国民を代表して、諸君の日頃の軍務に感謝する。

ティーブン:どういたしまして、大統領!

大統領:君には言ってない。将軍、スティーブンの髪についての会話が聞こえたんだが…

ティーブン:聞こえたって?あなたのスパイ衛星はそんなに性能がいいんですか?

大統領:いや、私の耳がデカいからだ。私自身、短い髪を好む男として、スティーブンが本当に兵隊ごっこをしたいのなら、髪を切るべきだと思う。

将軍:大統領、それは命令ですか?

大統領:将軍、アメリカ軍最高司令官として、ここに命令する。その男の頭を刈りたまえ。

刈り上げスティーブンも意外とかわいい。

さて、スティーブンが「近いうちに」「ペルシャ湾岸のどこか」で番組の収録をやる、というのは前々からいろいろ前フリしていたのだけど、それが先週の「Operation Iraqui Stephen: Going Commando(※)」でした。

私は実際に見るまであんまり認識していなかったのだけど、これって、USO(※)全面後援の、イラク駐留軍慰問ツアーなんですね。USOに敬意を表して、スティーブンは旧式のスタンドマイクにゴルフクラブを持ってスタンダップをやってます。これは何かというと、USOの慰問活動に後半生を捧げたボブ・ホープのスタイルの真似らしいです。

USOといえば、ジョン・スチュワートも表彰されたことがあるし(2008年3月28日のエントリー参照)、The Daily Showでは「特派員」のロブ・リグルが、やはりイラクのツアーに行ったことがあるのですが、兵士たちの前でやるショーそのものをテレビで流すということは、あまりないそうです。

兵士だけを観客にやっている時は、彼らだけにわかるような内輪ネタをやったりするし、逆にイラク戦争や軍をあまり強烈に皮肉るようなネタは控えめにしてあるし…(でも、「Don't Ask Don't Tell(※)」を思い切り皮肉ったネタはやっていた。兵士の反応が気になってちょっとドキドキした。)

つまり、全体的には「兵士たちのため」が第一で、一般視聴者向けでないとも言えるのだけど、それでもあえて同じショーをテレビでも流したのは、番組の中でスティーブンが皮肉で言っていたように、「イラク戦争はもう終わったのでしょう?だって、テレビでもうほとんど報道してないじゃないですか。」という状況の中で、まだイラクには軍が駐在していて、戦争が続いているんだってことをアピールする意味もあったのでしょう。

兵士への慰問でやっているショーと同じものを、本国の一般視聴者が見る事は珍しいし、ましてや私のような外国人にとってはこういうのを見るのは初めてで、「The Colbert Report」の観客がモノホンの兵士ばかりなんて、控えめに言って…妙な感じ。

いや、スティーブンのパフォーマンスはいつものように面白くて、アメリカ兵たちと一緒にケタケタ笑いながら見ていたのですけど。主な問題はゲストコーナーで…ゲストの将軍や下士官たちが武器を持ってくるのも嫌だったし、イラクの副首相がアメリカ軍を褒め称える発言をして、スティーブンに「兵士たちにゴマをするのは私の役目ですから」と言われたりしているのを聞いた時は、はっきり言って引きましたね。

それと、この番組では、オバマ大統領を筆頭に、バイデン副大統領、マケイン元大統領候補、サラ・ペイリン元副大統領候補、クリントン元大統領、ブッシュ(父)元大統領、ブッシュ前大統領が録画で登場して兵士たちに挨拶したのですが…さすがにブッシュ前大統領が出てきたときは、ちょっと居心地悪かった。まあ、クリントン、ブッシュ(父)と出しておいて、ブッシュ前大統領だけ出さないってわけにいかないのでしょうけど。

でも考えてみれば、「軍の慰問だから」とはいえ、これで一応、ブッシュとサラ・ペイリンが「The Colbert Reportに出演した」ってことになるんですね。それってすごいかも(笑)。

慰問の側面とテレビ番組の側面とのバランスが難しかったと思うけど、スティーブンは見事にやってのけたと思います。

※Going Commando(コマンドーでゆく):俗語で「下着をはかない」という意味。

※USO:アメリカ軍の福利厚生を支援する非営利団体。兵士のためのパーティを主催したり、戦場にエンタテイナーを慰問に送り出したりする団体。

※Don't Ask Don't Tell ポリシー:アメリカ軍において、ゲイであることをオープンにした兵士は除隊、という決まり