ブロードウェイ・ミュージカル鑑賞記 Avenue Q(その2)

チャンスを求めてこの国に来たよ
韓国系デリで働こうとしたけど、わたしゃ日本人なのよ!
だから必死で努力して、ソーシャルワーク修士号を2つも取ったよ
今や私はセラピスト!
でもクライアントは一人もなし!
おまけに婚約者は失業中!
請求書は山ほど来てる!
わたしの人生、サイテー!

〜クリスマス・イブ It Sucks To Be Me

「アベニューQ」の登場人物で、私が一番気に入ったのは「クリスマス・イブ」です。日本人で女性だから、一番感情移入しやすいのは当然、と思うかもしれないけど...いつもは私、キャラを気にいるのにそういうの関係ないんだけどね。でも、なぜか彼女は、とっても気に入ったのでした。

「チャンスを求めて」アメリカに渡った、というのもよく分る。彼女の世代は大学出た時、就職氷河期だったものねえ。それにあの性格では、日本企業で生きにくいのもわかる。(必ずしも「日本で」生きにくいとは思わないけど。)

前回も書いたように、なぜ「クリスマス・イブ」なんていう名前なのかは不明です。たしかに日本人はクリスマス・イブが好きだけどね。クリスマス当日よりなぜかイブが好きだけどね。「イブ」は女性の名前でもあるけれど...もしかして本名は「伊部さん」だろうか(笑)。「クリスマス」は、ユダヤ人と結婚するからという皮肉?

彼女の「失業中の婚約者」はユダヤ系のブライアン。「深夜テレビの大物コメディアン」にずっと憧れているのだけど、現実は大学出て10年、半端な仕事を転々とする生活で、今は失業中。

う〜ん...でも悪いけど、ブライアンってあんまり面白くないから(笑)。いい人なんだけどね、コメディアンの才能があるとは思えない。婚約者のクリスマス・イブの方がずっと面白い。セラピストに負けていてどうするの。

というか、クリスマス・イブも最初に登場した時は、「この人、セラピストに向いているんだろうか?」と疑問を起こさせるんだけどね。アドバイスがあまりにストレートで乱暴なので、クライアント(患者)がみんな一回だけで「治って」しまうのが悩みのタネ(笑)。

でも、実はクリスマス・イブは心優しい世話好きな女性で、クローゼットゲイのロッドや幼少時の心の傷をかかえたトレッキー・モンスターなど「アベニューQ」の住人たちの相談に乗って、言葉はランボーだけど的確なアドバイスをしているのです。立派なセラピスト。というか、ご近所さんたちの相談にタダで乗っているうちに、セラピストとして成長してくるのかな。

特に、煮え切らないプリンストンとの恋に悩むケイト・モンスターの相談に乗って歌う「愛すれば愛するほど、ブチ殺したくなるものよ(The More You Ruv Someone The More You Want To Kill Him)」は傑作です。

ケイト:どうして人は、お互いに愛し合って、仲良くやってゆくことができないのかしら?

クリスマス・イブ:ケイトったら、「愛しあう」ってことと「仲良くやってゆく」ことが同じだと思ってんの?

♪愛すれば愛するほど、ブチ殺したくなるものよ...

どんなに愛していても、時々、彼がただのデブの怠け者に見えて
野球のバットでドタマをカチ割りたくなるのよ!

...だから、もしそんな気持になったら
彼を逃さないで、追いかけて捕まえてブチ殺すのよ!
ひょっとしたら、それが運命の人だから。

なんとなく、クリスマス・イブって大阪出身って気がするのですけどね(笑)。いやわかんないけど。

彼女の結婚式のときの花嫁衣裳がかわいいのよね。ウェディングドレスと着物を組み合わせたみたいで、帯に電飾がついてる(笑)。結婚式はユダヤ教式なのだけど。(あの、グラスをナプキンで包んで踏むやつ。)

最後には、カムアウトを助けたロッドとトレッキー・モンスターが安定したクライアントになってくれて、ブライアンも就職して、めでたしめでたし。まあとりあえずは。

またしても、ちっともまとまりませんが、とにかく「クリスマス・イブが好き!」という話でした。次回はもしかしたら、秘密の恋に悩む隠れゲイの共和党員ロッドの話を。