【映画感想】ベンジャミン・バトン 数奇な人生 ☆☆1/2

まるっきり面白くないってわけじゃない。ただ、長い!

最後の方、ベンジャミンが年を取って…いや若くなってからはかなり面白いのだけど、そこへゆくまでが長い長い。10分おきぐらいに現在のシーンにカットバックするのもくどいし。

たしかに「フォレスト・ガンプ」に似ているのだけど、「ガンプ」(映画版)と比べると、「彼を通じてアメリカの近代史を総括しちゃおう」というような妙な色気は感じなかった。その点、好感が持てるとも言えるのだけど…だから起伏に乏しくなっちゃったとも言える。

ただ、ティルダ・スウィントンのエピソードはすごく良かった。そこだけでも観る価値があると言うか、いっそそこだけでもよかったというか…

あ、ティルダ.スウィントンと言えば、彼女が主演した「オルランド」の方が、この手の話(<大雑把にまとめすぎ)としてはずっと面白かったなあ。あれなんか、エリザベス朝から現代まで描いて1時間半ちょいだったよ。まあ、短ければいいってもんでもないけど…映画の中の時間が長いからと言って、上映時間を長くする必要はないのよ。1時間半でも十分「エピック感」は出せるものだし。

あともうひとつ、これ、字幕がひどい。「元の台詞の意味合いを、制限文字内でできるだけ伝えよう」という努力を、はなから放棄しているとしか思えない訳。たとえば、7回雷に打たれたおじいさんが「私は生きているだけでラッキーだということを、神様は私に繰り返し思い出させる」と言っているのに、字幕は「私はまだ生きている、ありがたいことだ」とかなんとかなっていて…老人ホームでも最高齢のおじいさんがそう言っても、「雷に打たれる」ってこととは全然つながらないでしょ。このエピソードの意味自体が、わかんなくなっている。他はひとつひとつ正確には憶えていないのですが、全編この調子だったような。

<以下、わりとどうでもいいネタバレ>

ベンジャミンが若くなっていって、子役と交代する直前、たぶん肉体年齢20歳ぐらいのところをブラピ自身が演じているのですが…いきなり「テルマ&ルイーズ」の頃のブラピが復活しいて、ああびっくりした。CGも使っているのでしょうが、まったく不自然さが感じられなくて、すごかった。あれだけでも観る価値はあるかも。

アカデミー賞では美術・メーキャップ・視覚効果の3賞を受賞していて、まあこれは納得ですね。

<どうでもいいけど、ツッコまずにはいられない>

デイジーが事故に遭うところで、「そのタクシーに乗った客がああしなければ、タクシー運転手がこうしなければ、この店員が失恋しなければ…」と、しつこく「人生がいかに偶然の積み重ねに左右されるか」ってことを強調するのですが(そりゃそうだよ。だから何?)…

でもこの場合、最終的にデイジーが道路を横断しながら踊ったりしてなければ、はねられなかったんじゃないかなあ…