素直に喜べない

1.今朝、NHKのニュースで、「最近の文庫本事情」というのを見たのですが…

最近の文庫本は、以前の文字の大きさを大きくしていて、それは高齢者が読みやすいようにと考えてのことだったけど、意外にもこれが若者に好評だったそうです。あと、若者をひきつけるために名作本のカバーをマンガや人気俳優の写真にしたり、ルビを多くしたりもしているそうで。

もちろん、そういう工夫をすることはいいと思うのです。高齢者でも若者でも読みやすいほうがいいに決まっているし、読みやすくしたり、目を引くような新しいカバーをつけることは、「読んでほしい!」という出版社のやる気を表していると思うから。でも…

それに出てきた出版社の人の言い方が、どうもひっかかったのですよね。「本当は辞書をわきに置いて読んで欲しいんですけどね」とか、「最初は不純な動機でもなんでも、とにかく手に取ってもらえれば」とか…なんだか、消費者(本を買う若者)を馬鹿にしているというか、「本当はやりたくないけど、しょうがないから今の若者の低いレベルに合わせてやろうか」という「上から目線」が見え見えで。

「本が売れないのは今の若者の頭が悪いせい」なんて考えている出版社というのは、「うちのレストランが流行らないのは味の分かる客がいないから」と思っている料理人や「うちの服が売れないのは世間の人のセンスが悪いから」と思っているファッションメーカーみたいなもので、そんな考え方のうちは絶対復活できない、と思う。

ところで、本の読みやすさっていえば…昨日デイリーショーにAmazonの人が来て宣伝していましたが、Amazon Kindle 2が出たようですね。重さ290gのキカイで約1500冊分の本を持ち歩けるというというのには非常に魅力を感じるのですが(もちろん文字サイズは自由に選べるし、辞書も内蔵されている)、359ドルは高い。まあ、そのうち普及すれば値段も下がるし使い勝手も上がるでしょうし…まだ「買い時感」がないなあ。あと2〜3年は、しょうがないから紙の本を持ち歩くか。

あ、日本語版が出たら、縦書き横書きの読みやすい方を選んだり、ルビを出したりださなかったりも選べるようになるかもですね。


2.「おくりびと」がアカデミー外国語映画賞を取ったことが話題ですが…素直に喜べない私。

おくりびと」は見ていませんが、良い映画なのだろうと思うし、この映画が悪いわけではまったくないのですが…

あのさー、普段アカデミー賞なんて全然興味ないくせにさあ、日本が獲った時だけ騒ぐわけね?普段無視しているのに、こういう時だけ外国の権威をありがたがるっていうのは、なんだかなあ。

オバマさんの政策も知らずに「名前が町名と同じ」というだけで応援したり(応援すること自体より、それを大統領選挙自体のニュースより大きく報道することが)、ペイリン副大統領候補がどういう人かも知らずに「メガネが日本製」ということだけ真っ先に話題にしたり、この「日本や日本人が関わっているところだけに異常に興味を示し、それ以外の肝心なところにはまったく無知で平気」という癖って…なんだかちょっと惨めったらしいと、いつも思っていました。

いや、小浜市やペイリンのメガネとは違って、「おくりびと」がアカデミー賞を獲った事自体は、すばらしいと思いますよ。でも、もともとアカデミー賞について興味も知識もあって、価値を認めている人だからこそ、「すばらしい」と言うことに意味があるわけで。アカデミー賞を誰がどうやって選んでいるのかも知らず、外国語映画賞だけは他の賞と選考過程が違うということも知らない人が、ただ「権威のある賞らしいから」というので大騒ぎするのは…

アカデミー賞の価値はちゃんと認めているって?じゃあ、どうして、外国語映画賞よりずっと価値の高い作品賞を獲った「スラムドッグ$ミリオネア」が、日本でだけ4月まで観られないのよ?いらいら。(<要はこれが言いたかったらしい。)