【読書感想】テヘランでロリータを読む(その2)

前回(2/15)書いた、アーザール・ナフィーシーが言っていた「『彼らの文化』ではない」ということについて考えていて、思い出したのは、先日「The Daily Show」にゲストで来ていた、神風特攻隊に関する本の著者に対するインタビューでした。

The Daily Show with Jon Stewart 2009/1/12

なんでこれを思い出したかというと、「テヘランでロリータを読む」の、イラン・イスラーム革命がだんだんクレージーになってきて、革命政府に反対する人がどんどん投獄され処刑されたり、音楽だの文学だのファッションだのとにかく文化的なものが(退廃とか堕落とか言われて)片っ端から弾圧されるところを読んでいて、ソ連スターリン時代を連想したのはもちろんですけど、第二次世界大戦中の日本にもびっくりするほどよく似ている、と思ったからです。(もちろん、どちらも本で読んだことですけどね。当たり前か。)

インタビューの中でジョンが著者に訊いていたのは、彼らは学徒動員された大学生で、当時の日本のエリート中のエリートで、知識もあり、盲目的に天皇を崇拝してたわけでもない。この作戦が戦争の勝利にはおよそ繋がらないことは、ちょっと知識のある人にはすでに明らかだった。それなのに、なぜやったのか?

結局は、わからないのですけどね。この著者は、神風特攻隊の生き残り…というと矛盾した言葉だけど、飛行機の故障や偶然のタイミングで生き残った人たちにインタビューしたみたいなんですが、それでも彼らは神風をやると決めた人たちではないし、特攻して死んだ本人たちでもない。終戦後すぐにインタビューしたわけじゃないから、急激に変わった環境に生きるうちに(うち一人など、戦後ハーバード大に留学したそうですから)、視点が決定的に変わっていただろうし。

わからないのだけど、ひとつ気づいたのは、著者もジョンも、「それが日本の文化なんだろう」とは言わないのですよね。「彼らは我々とは文化が違うから、理解できない」とは、絶対に言わない。

このインタビューがあったのはイスラエルのガザ攻撃の真っ最中で、たぶんジョンの頭を占めていたのは第二次世界大戦よりそっちの戦争なんだろうな、と思いながら見ていたのですが…これに関して、もし「それがイスラエルの文化だ」とか「ユダヤの伝統だ」とか言われたら、彼も嫌だろうしねえ。

でも…日本もイランも、どこの国でもそうなんでしょうけど、他の国の人からそう言われる前に、「それがわが国の文化だから、外国人にはわからない」と、言ってしまう人もいるわけですよ。

つくづく思ったのは…暴力を肯定したり、人の命を軽んじたり、人の苦しみに無関心だったりそれを「必要な犠牲」と呼んだり、文化を弾圧したり、女性や少数派を差別することを「わが国の文化・伝統」と呼ぶ人たちがいたら、思い切り疑ってかからなければならない、ということです。

逆に外国人からそれを「それがあなたたちの文化なんでしょう」とか言われたら、「そうなのかなあ」とか思っていないで、このナフィーシーさんみたいに猛然と怒らないといけないのね。