The Daily Showの秘密兵器

The Daily Showのスタッフについて、とても面白い記事があったのでご紹介。(実は5日ぐらい前の記事なんですが、毎日他のネタがあったので出すのが遅くなってしまいました。)

「The Daily Show」の秘密兵器

The Daily Show with Jon Stewart」のプロデューサーの一人、37歳のアダム・チョディコフ(Adam Chodikof)さんという人の話です。

このチョディコフさんは一日に新聞を7紙読み、C-Span(ワシントンの政治関係の中継やニュースを一日中やっているケーブルテレビ局)を何時間も見る「ニュース中毒」ですが、それだけではなく、ものすごい記憶力を持っている人だそうです。

The Daily Show」の得意技に、政治家がある時と別の時で矛盾したことを言ったり、嘘をついたりした時に、その証拠の古い発言のビデオを引っ張り出してきて、最新の発言と並べて流して矛盾を際立たせることがあります。

そのパターンの傑作、「一期目のブッシュ対二期目のブッシュ」の討論会。

The Daily Show with Jon Stewart 2007/4/24

イラク戦争について、まったく正反対のことを言っている「一期目のブッシュ」と「二期目のブッシュ」の「討論会」の進行役を勤めるジョン・スチュワート。

過去の膨大なニュースフィルムの中から、よくもまあこんなにぴったりな発言を探し出してくるもんだなあ、と感心していたのですが、それを支えているのがこのチョディコフさんの超人的記憶力であるらしい。

政治家のある発言を聞いて、「ちょっと待て、この人、前はそれとはまるっきり違うことを言っていたような気が…」と漠然と思うぐらいは誰でもできると思うのですが、「それはたしか、1年半ぐらい前の、XXXに関する記者会見の時じゃなかったかな?」というのを思い出すことができるというのが、この人の凄いところなんでしょうね。そこまで分かれば、あとはスタッフがビデオアーカイブを検索して探すことができるから。

チョディコフさんも、ジョンもデイリーショーの他のスタッフも、正式なジャーナリストや記者というわけじゃないので、例えばホワイトハウスの記者会見に出席したりはできないのですが、彼は「必ずしもその場にいる必要はない」と言っています。記者会見のトランスクリプトはすぐ手に入るし、それを読んで矛盾しているところ、ジョンがネタにできるようなおかしなところを探し出すことはできるから。

「『ゴッドファーザー』を観ましたか?例えるならぼくは、トイレに拳銃をテープで止めておく役なんです。後でジョンが、それを取って撃てるように。」

えらくカッコいい喩えだ(笑)。

もし「ゴッドファーザー」を観たことがないという珍しい方がいらっしゃったら、彼が言っているのは1作目の、アル・パチーノがイタリアン・レストランに敵のマフィアと悪徳警官を「和平会談」と偽って呼び出して、あらかじめそのレストランのトイレに隠しておいた拳銃を…いや、まあ、観て下さい。

一番興味深かったのは、前にちょっと書いた元防衛次官ダグラス・ファイスのインタビューの話。(5/13のエントリー参照)

私は、「ジョンはイラク戦争開戦以来毎日のように、その矛盾に突っ込む番組を作ってきたのだから、よく憶えていて当然だ」という意味のことを書いたのですが、ジョンはこのインタビューの前に、ちゃんと予習していたのですね。チョディコフさんに、彼が「純粋な情報」と呼んでいるファイルを持って来てもらって、「基本的に、ジョンはぼくにイラク戦争全体の誤りを立証させた」そうです。チョディコフさんは、このインタビューを、「自分の仕事の集大成」だと考えているそうです。

政治に関する意見であっても、ジョークであっても、膨大な事実の裏付けがあってこそ、これだけ人の心を動かすものができるんだなあ…と、なんだか感動したのでした。

前にジョンはビル・モイヤーズのインタビューで「ぼくの番組から一切ジャーナリズムは得られない」と言っていたけど...ここまで読むと、「いったい、これのどこがジャーナリズムじゃないんだ?」という気がしますが。