ジョン・オリバー v. トニー・ブレア

先週木曜の「The Daily Show」の、ジョン・スチュワートによるブレア元英国首相のインタビューについて書きたいと思っているのですが…なぜか今回、いくら検索してもトランスクリプトが見つからないのですよ〜。

トランスクリプトなしでも、ビデオから聞き取って訳せないこともないのですが、いちいち確認しながら進まないといけないので、時間がかかるのです。今までに訳したものも、長いものはほとんど、英語圏の誰かがトランスクリプトしてくれたものを訳してます。この間の「Toss」や昨日のエミー賞みたいな短くて軽い会話なら、トランスクリプトがなくてもすぐなんですけど。

というわけで、順番逆かなと思うのですけど、この話を先に。

The Daily Show」にブレア元首相が来ると聞いて、英国人である「特派員」のジョン・オリバーと何かやってくれるのかな、と思っていたのですが、残念ながら番組の中で二人が顔を合わせることはありませんでした。

オリバーはイギリス時代からの親友アンディ・ザルツマンと「The Bugle」というポッドキャストの番組をやっているのですが、今週月曜の同番組で、自国の元首相と「会った」時の複雑な気持ちを語っていて、それがとっても面白かった。

下のリンクで聞けます。(該当番組はエピソード45)

http://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/us_and_americas/us_elections/the_bugle/

オリバー:今週、トニー・ブレアに会ったよ。「会った」と言っても、彼が「隠しきれない軽蔑のまなざしでぼくをじろじろ見ていた」というだけだけど。

その前に、ぼくが生まれて初めて投票した相手は彼だったということに気がついた。あの男はぼくが民主主義的童貞を捧げた相手だったんだ。その時は、それが本当に特別なことのように思えたんだ。投票所のブースにアロマキャンドルかなにか置いてあって、ムードを高めていたみたいにね。

でも今は、本当にひどい別れ方をした恋人に数年後に再会して、「そもそも、この人のどこがよかったんだろう?」と考えているみたいな気分だった。

番組ではオープニングスケッチをやったんだけど、時間の関係でカットしなきゃならなかった。でも、The Bugleを聞いている人で興味のある人がいたら、The Daily Showの公式サイトに載ってるよ。

そのスケッチの最後に、ぼくはジョン・スチュワートに、首相に「どうしてわが国を必要のない戦争に引きずり込んだのか聞いてくれ」って言ったんだ。たぶん、それが彼の気に障ったんだろうね。

う〜む…彼が喋っているのを聞くと笑えるのに、こうして訳すと、なんとなく悲しくなってしまうのはなぜだろう。

「民主主義的童貞を捧げた(gave my democratic virginity)」というのが気に入りました。「政治的童貞」じゃないところがいいね。私が民主主義的ヴァージニティを捧げた相手は…うーん、思い出せない。改めて、ジョン・オリバーはまだ若いんだよなあ。(1977年生まれ)

彼が言っている、オンエアからはカットされたセグメントはこれ。

The Daily Show with Jon Stewart 2008/9/18

オリバー:イギリスの人がこの番組を見るのは今夜だけだろうから…ほら、ママ!これが手紙に書いた頑固なボスだよ!ほら、「アロー」って言って!

英国の第三党の党首がイギリスのTVコマーシャルにひっかけたジョークを言っているビデオを映して、まるで反応しないジョン・スチュワートに(そりゃそうよね)「アメリカ人にはドライなウィットというものが分からない!」と言ったり、突如として贔屓のサッカーチームの応援をはじめたりと、さんざんふざけた後で、最後に、まるでついでのようにひょろっと重要なことを言う…こういうの上手いなあ、オリー(オリバー)は。

そしてジョン・スチュワートは、元首相にその通りのことを聞いたわけですが…もちろん、オリバーに言われたからってわけじゃないでしょうけどね。

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Nさま

メッセージありがとうございます。

いいオトナの二人がやっちゃうからいいんでしょうね。

日本人にはムリって言うより…私の知る限りでは(それは狭い範囲ですが)、アメリカにも他の国にも、ジョンやスティーブンのようなコメディアンって他に思いつかないですね。だから、日本にいないからと言ってそれほど嘆くこともないのかも。

収録を見にいった人のレポートにあったのですが、収録前のQ&Aセッションでのジョンへの質問で「今までに聞かれた中で一番ヘンな質問は?」というのがあって、ジョンは「『自分の出てくるファンフィクションを読んだ事があるか』という質問」だと答えていたそうなので…読んだ事があるかどうかはともかく、そういうのが存在していることは知っているみたいです。(アメリカのそういうサイトって、別に検索よけとか全然してませんからね。公式サイトにもリンクしまくりだし)

そのうえで、こういうおふざけをさらっとやっちゃうということは…「別に気にしてない」と言っているようで、ちょっと嬉しかったのです。いえ、私は特にその種のファンフィクションのファンではないんですけどね。(どっちかというとslashじゃないやつの方が好き。)

コメディアンは相手の言ったことに対して即意当妙で面白いことを言い返すのが商売なのだから、頭の回転が速いのと言葉の使い方が上手いのはもとから必須条件で、それに知識と思想が加われば、討論で無敵なのもむしろ当然なのかなあ…と考えたことがありましたが…「人としてまっとう」というのも、本当にそう思います。