イランの「デイリーショー」(先週のThe Daily Show)
先週は、何と言っても木曜日のこのゲストが印象的でした。
The Daily Show with Jon Stewart 2011/1/20
Voice Of Americaで放送されている、Parazit(ペルシャ語で「(放送の)雑音」という意味)という、「イランのデイリーショー」と呼ばれている政治風刺コメディ番組のプロデューサー&脚本家&ホストの二人、ホセイニさんとアルバビさん。
Parazit:「革命防衛隊は、メキシコ湾に行って原油を掃除すると言っている。16ヶ国の人々が掃除できなかった油を。その前に、自分の顔から恥を洗い落とせよ!それにメキシコではテキーラもあるし、裸の人もいっぱいいるし...目をつぶって仕事する気か?」
彼らの番組はイラン政府、アフマディネジャド大統領を始め、聖職者たちや悪名高い革命防衛隊をばりばり批判するもので、もちろんイラン国内で放送することはできないのですが、ワシントンDCで作られているこの番組は、イランでは禁止されている衛星放送のアンテナやインターネットのダウンロードでイランの人々に届いていて、すごい人気だそうです。
http://parazit-parazit.blogspot.com/
↑こちらがそのサイト。ペルシャ語なんで、何を言っているのかは全然わかりませんが...映像を見ているだけで、政府に対してかなり突っ込んだ批判をしているのが想像できます。(ひとつだけ想像ついたのは、アフマディネジャドの顔にアニメのピノキオがかぶさるところ。「嘘つき」と言っているのかな。)
観客を入れてやっているのではないので、笑いどころも全然わからないのですが、このインタビューの二人の話を聞いていると、こんな大変な状況をネタにしていても、ちゃんと笑えるものになっているのだろうと想像がつきます。
ジョン・スチュワート:イランでの厳しい検閲にもかかわらず、この番組は大人気になっているのですよね。
アルバビ:車の窃盗をなくそうとするようなもんですよ。何やったってムダ、なくなることはない。
スチュワート:あなたも、ワシントンDCに長く住んでるんですねえ。
アルバビさんは1985年、ホセイニさんは2000年にイランからアメリカに来たそうで、ある日ギネスを飲んで意気投合、この番組のアイデアを思いついたそうです。
イランには今まで政治風刺というものはなかったそうで、ヒントというか、参考にするものがなかったので、まさに「The Daily Show」をお手本にしたそうで、「イランのデイリーショー」と呼ばれるのは正しいのです。ジョンのことを「彼こそ預言者!」と言って、ジョンは困ってましたけど(笑)。
スチュワート:あなたに「預言者」と呼ばれたことで、後で困ったことになったりしないでしょうね?
ホセイニさんは、故国では生まれた時からずっと抑圧があって、家の外では嘘をつかなきゃならなかった、現在イランにいる若い人たちには怒りや不満がたまっているけれど、それをなるべく穏やかに、ユーモアをもって表現したい、と...
アルバビ:アフマディネジャドが、アメリカでもっとも権威ある大学に来て、世界中が聞いているところで、「イランには同性愛者はいない」と言う。それを聞いた俺たちは、「これで番組、いっちょ出来上がり!」
ホセイニさんは、アメリカの政治にはほとんど興味がなくて、番組で扱うのはイランの政治だけ、と言っています。イランは35歳以下が75%を占める若い国なので、若い世代に向けて発信してゆきたいと。
反応は主に番組のFacebookページに来るそうで。Facebookはイランでは禁止されているそうですが、それでも25万人のファンがいるそうです。「緑の革命」ではツイッターが大きな役割を果たしたことが話題になりましたが、Facebookもすごいんだな。もう現代の政治の動きには、ソーシャルネットワークが欠かせなくなっているのね。
この番組の存在にはもちろんイラン当局も気づいていて、この二人は多分故国には戻れない状況なのですが...当局が対抗するために何をやっているかというと、「Parazit」をそっくりマネた風刺番組、でもイランの高位聖職者と大統領だけは絶対に批判しない毒抜き版を公共放送で放映することだそうです。そりゃ...面白くなさそうだ。
スチュワート:この番組をもっと広めるには、何が必要だと思いますか?
ホセイニ:(あなたのような)ラリーをやるべきかな。
アルバビさんは、イランでもデイリーショーは人気があるので、この番組に出たことで「Parazit」はさらに大きく広がるだろう、と言っていました。
アルバビさんが、イランの当局も大統領も革命防衛隊も「The Daily Show」のことは知っている、と言うので、ジョンはびびってましたけど。
この一件からして、革命防衛隊が知っているのは確かなようですが...
ジェイソン・ジョーンズがイランに行った時、ジョンのブッシュ大統領のモノマネ(「ヘヘヘ〜」というやつ)をマネするイラン青年がいて、びっくりしたものですが、本当にThe Daily Showは中東方面で人気あるのね。
The Daily Show with Jon Stewart 2009/6/23(いや、何度見ても傑作だなこのセグメントw)
デイリーショーの公式サイトの、このインタビューのコメント欄にも、イラン人からのコメント(多くは在外でしょうが)がすごく多くて驚きました。
ジョンは、(TV放送分の)インタビューを「あなたたちの番組は我々のに似ているけど、本物のガッツがあるのはあなたたちの方で、同じユーモアの仲間だと思われるのは光栄です。」と締めくくっていました。
いやー、ジョンもスティーブンもすごいけど、世界は広いというか...なんかこう、風刺や笑いというものの力の幅広さと深さを感じさせるインタビューでした。
発信する方も見る方も、呑気な私たちには想像もつかない大変さでしょうけど、がんばってほしいです。