オーブリー&マチュリン「21」(その19) 

あー、今回で、タイプによるスクリプトがある(ちゃんと活字で印刷されている)部分は終わりだ。あとは手書きのページが10ページ。たぶん、2回分ぐらい?いよいよ残り少なくなってきました。

砲撃訓練が終わったと思ったら、思い切り機嫌の悪いキリックがジャックの礼服を持って艦尾甲板に現れ、「まったく、こっちは15分も前から準備万端で待っているんですよ」と...いや、このパターンも最後かと思うと寂しいですね。

そう、ジャックとスティーブンは旗艦にディナーに呼ばれていたのでした。レイトン提督はなぜか上機嫌で、特にスティーブンをことのほか丁重に迎えました。(ドクター・マチュリンとウィリアム王子の関係を聞きつけているらしい。この頃には、ウィリアム王子の王位継承が濃厚になってきていたらしいので。)

提督のディナーには、当然、彼の従兄弟のミラー大尉も出席していて、提督は改めて二人にミラーを紹介しました。と言っても、二人ともミラーとは一応知り合いだったのですけどね。

ティーブンは彼を望遠鏡で見たとき「ヘンリー・ミラーだ」と言ってましたが、ここでは提督は彼を「ランドルフ・ミラー」と紹介しています。しかも、提督の従兄弟になったり甥になったりしているような。まあ、ほんと、何度も言いますが初稿なんで、このへんになるとそういう細かいことは気にしていられないのですが...まあ、一応突っ込んでおきます。

このディナーは艦上で、出席者は男ばかり8人で、陸上でやるような正式なものではないのですが、その描写を読むと、食べ物の量と、なによりワインの量がすごそうです。このディナーの場合、鰹にはサンセール、家鴨にはオー・ブリオン、ローストビーフにはバーガンディ、食事の終わりにポートワイン、プディングにコーヒーの後はブランデー。はあ、当時の海軍士官って、こんな食事をするかと思えば塩漬け肉とコクゾウムシのわいた乾パンで何カ月も過ごしたりするのだから、敵と戦って死ぬより先に心臓病か肝臓病にやられそうです。

あいにくここでは、バーガンディが「corked」の状態であったようです。つまり、保存状態(特にコルク栓)に何らかの問題があって変質してしまい、変な匂いと味になっているということのようですが...出席者はみんな、気がついていないか、気がついていないフリをしていることにスティーブンは驚いています。たぶん、陸での民間のディナーパーティでは考えられないことなんでしょう。海軍のこういうパーティでは、船乗りはあんまり贅沢は言わないのと、上官の出すものに文句をつけにくい、ということがあるのでしょうね。

でも、ジャックは文句は言わなかったけど「グラスを空けなかった」と書いてあって...ジャックは贅沢は言わないけど、味がわからないわけじゃないのです。

「上官には文句を言いにくい」と言えば、ジャックはレイトン卿に、「私の従兄弟」(ミラー大尉)を彼の任地のケープタウンまで乗せて行くように頼まれています。個人的なことなので「命令」という形ではないけれど、まあ命令と同じですな。

なんで旗艦で行かないのかと言うと、ジャックのサフォーク号は先遣隊として最初に南アフリカに向かうことになっていて、ミラー大尉は一刻も早く赴任したいので、というのがタテマエなんですが...まあ目当ては明らかに、サフォーク号に乗っているクリスティーン・ウッドでしょうね。ミラーがレイトン卿に頼み込んだのでしょう。

さて、どうするスティーブン?