先週のThe Daily Show〜アル・フランケンと30人の共和党員(その3

この題名、「アリババと40人の盗賊」のもじりのつもりだったんですけど...ちょい無理があったか(笑)。

昨日、一昨日のつづきです。

The Daily Show 2009/10/14 Rape Nuts

セッションズ議員(反対した30人のひとり):企業の契約の内容に口を出すのは、議会の仕事ではありません。

ジョン・スチュワート:いや、それは議会の仕事だよ。政府がどんな企業と仕事すべきか決めるのは、政府の仕事じゃないって?それは、まさにあんたたちの仕事だよ!

セッションズ議員:この種のもめごとの解決には、むしろもっと調停を利用すべきであり...

ジョン:「この種のもめごと」?集団レイプのことをそう呼ぶわけ?あんたに言わせれば、ジェフリー・ダーマー(連続殺人・食人鬼)は「ディナーの客とちょっともめた」ってことになるわけ?「こういった種類のイザコザは」...って、まったく、集団レイプ事件なんだよ!反対の本当の理由は何なの?

セッションズ議員:これはハリバートン社に対する明らかな政治的攻撃であり...

ジョン:あのね...ハリバートン社を守るためにはレイプの被害者を敵に回さなきゃならないってことになったら、誰に味方するか、考え直してみた方がいいんじゃないの?

その通り。こんな、どう考えても言い訳の立たない、袋叩きにされること確実な投票をするぐらいだったら...普段どこに世話になっているかはちょっとだけ置いといて、とりあえず賛成しとけばいいのに、と思いますけどね。せめて、少しはカッコつければいいのに。この法案はハリバートン社を名指しで公共事業から外そうとしているわけでもないし、要は、従業員との契約をちょこっと変えさえすれば、政府の仕事を続けられるんでしょ?

ところが、いろいろ読むと、そうもゆかないらしいのですよね。何でも、国防省と契約している民間軍需企業の職場というのは、治安の悪い国で展開しているせいもあるんだろうけど、アメリカの会社としては信じられないぐらいセクハラ・差別・職場内暴力が横行しているらしく、この「調停条項」がなくなってもめごとが全部アメリカの法廷にゆくことになったら、結構大変なことになるかもらしい。そもそもハリバートン社でレイプされたのはジェイミーさんが初めてではなく、他にいくつも隠蔽されたケースがあるらしいので...それらが一気に明るみに出る可能性もあるわけ。だから、そういう企業とつながりのある議員としたら、批判を浴びるのを分かってても「ちょっと、これだけは賛成させて...」ってわけにゆかなかったのでしょう。

ハリバートン社や、他の軍需企業が政府の仕事から外されるなんてことになったら...「何のためにイラク戦争をやったと思っているんだ!」ってことになるのかも(笑...ってる場合じゃないけど。)

ジョン:まあね、従業員のほんの一部が犯罪を犯したからって、即政府の資金を切るっていうのは不公平だとは言えるかもしれない。ここで、この修正案に反対した議員たちが、ACORNについて何て言っていたか聞いてみよう。

ここで、ポイント3:ACORN(エイコーン)。

ACORNはいわゆる「コミュニティ・オーガナイザー」の団体で、主な目的は貧しい人々を支援することです。例えば、家賃を滞納して追い出されたり電気を止められたりした時に大家と交渉したり、税金や補助金の申告のしかたを教えたり、無料法律相談したり...貧乏な人が無知ゆえに搾取されることのないよう援助するチャリティ団体で、オバマ政権になってから、国勢調査など政府の仕事も請け負うようになっています。

ところが残念なことにこのACORN、どうもユルいところのある団体らしくて...去年の選挙の時、ビンボー人がちゃんと投票するように選挙人登録を手伝ったりしていたのですが(アメリカの選挙は、葉書が自動的に送られてくるということはなく、いちいち自分から登録に行かないと投票できない)、ACORNが申請した有権者の中にまったく架空の名前が大量に含まれていたというスキャンダルがありました。オバマさん(当時大統領候補)は以前のチャリティ活動を通じてACORNと関わりがあるので、共和党はこのスキャンダルを散々攻撃に使ったものです。

最近も、ジャーナリスト志望の若者が隠しカメラを持って、ヒモと娼婦のフリをしてACORNの事務所を訪れ、「こいつらに売春させて稼いだ金(<もちろん犯罪)を申告したいんだけど、どうしたらいいか」と相談しました。ACORNの事務員は、「それは違法だ」と指摘することもなく、平然と申告の方法を教えていて、その一部始終をばっちり撮られてしまい、FOXニュースが大喜びで何度も放映した、という事件もありました。

※2010/3/6追記。最近、この「ジャーナリスト志望の若者」が民主党上院議員の事務所に忍び込んで盗聴器をしかけようとして逮捕され、この「Acorn」のビデオがまったくの捏造だったことが判明しました。ACORNさん、「ユルい」なんて言って失礼しました。

オバマさんと関わりがあり、オバマ政権になってから政府の仕事を始めた団体とあって、こういうスキャンダルはもちろん共和党にとっては格好の攻撃材料です。もちろん、今回の修正案に反対した30人も...

共和党の議員たち:ACORNのような腐敗した団体に、納税者の貴重な金が1セントたりとも渡ることのないようにしなければなりません!

ジョン:そうか、要は効率性の問題なんだ!ACORNの従業員は、ニセモノの娼婦に架空の犯罪のアドバイスをした。それに引き換え、ハリバートン社の従業員はホンモノの集団レイプをやっている!つまり、中間業者を省いたんだ。政府が無能だなんて、誰が言ったんだろうね?

ふう、このセグメント、最初見たときはそれほど強烈な印象というわけじゃなかったし、書き始めた時はもっと軽く済ませるつもりだったのですが...なんだか、いろいろ調べながら書いているうちにだんだん腹が立ってきてしまって、長くなってしまいました。

でもこのニュース、アメリカで報道されてはいますがあまり大きな扱いではなく、ジョンが「The Daily Show」で取り上げたことで、ようやく話題になったという感じのようです。

イラク戦争の怪しい開戦理由とかイラクで今でも続く自爆テロとかいう大問題に比べれば、この修正案自体は、取るに足らないニュースかもしれません。ジェイミーさんの事件が法廷に持ち込めるかどうかなんて小さな問題かもしれません。

でもねー、レイプ事件を「この種のもめごと」で片づけようとする感覚は、やっぱり許せないよなー。

ジェイミー・リー・ジョーンズさんは、アル・フランケンの修正案について次のようにコメントしています。

「他の女性の助けになればという一心で、あの経験を公の場で何度も何度も語らなければならなかったことで私が流した涙は、この法案によってすべて報われました。」