What's in a name?(先週のThe Daily Show with Jon Stewart)

先週もいろいろありましたが、木曜日のデイリーショーはとりわけ面白かった!

The Daily Show 2009/7/30 Healthraiser

ヘルスケア改革法案に反対する共和党のわけのわからん脅し文句戦術とか...

タウンホール・ミーティングで質問したおばあさん:このヘルスケア法案が可決されたら、政府のエージェントが「メディケア」の対象になっている高齢者をひとりひとり訪ねて、どういう方法で安楽死したいか聞くというのは本当ですか?

オバマ大統領:ご安心ください、政府には高齢者をひとりひとり訪ねるほど大勢の職員はいませんよ。

ジョン・スチュワート:あの〜、大統領?ここは「皮肉なユーモアのセンス」でゆくところじゃないでしょ!ここははっきり「そんなとんでもない噂があるんですか?まったくアホらしい!」って言わないと!

アップルのコマーシャルの「PC」ことジョン・ホジマンがアメリカの問題を全て解決する「どういたしまして。」というコーナー

The Daily Show 2009/7/30 You're Welcome

彼のヘルスケアへの解決法は、一言でいえば...「貧乏人は臓器を売れ!」

しかし、なぜジョン・スチュワートの臓器を狙って襲っているのかは謎(笑)

次は、「ホワイトハウス・ビールサミット」...白人警官が黒人教授を不当逮捕した後のすったもんだを解決するために、大統領が双方をホワイトハウスに招待して「いっしょにビールを飲みながら話しをした」という、気持ち良く馬鹿馬鹿しい話題。

The Daily Show 2009/7/30 White House Beer Simulation

この「ビールサミット」の内容は非公開で、実際にどういう話が交わされたのかはわからないので、デイリーショーでは「シミュレーション」として、黒人特派員のワイアットとジョンが一緒にビールを飲んでみたという、ふさわしく馬鹿馬鹿しいセグメント。クワンザハヌカの話をし、女子高生のようにケンカし、踊るジョンとワイアット。...可愛い(笑)。

ゲストはジョンの旧友、「40歳の童貞男」などの監督ジャド・アパトゥ。全体としても面白いインタビューだったのですが、実はこのインタビューの中で、個人的にすごく痛快だった一言があったのです。

The Daily Show 2009/7/30 Judd Apatow

ジャド・アパトゥ:(新作「Funny People」では)セス・ローガンが、アイラ・ライトという若いコメディアンを演じているのだけど、このキャラの本名はアイラ・ワイナーというのだけど...

ジョン・スチュワート:何から逃げているのかな?

アパトゥ:聞いたところによると、ユダヤ系っぽい本名を、もっとユダヤ系っぽくない名前に変える人がいるらしいんだ。

スチュワート:ばかばかしい!そんなことをする人間は名乗り出るべきだね。なぜなら、世界で一番大事なことは、人が個人的にやることが、同じ民族グループの人々に気にいられるかどうかってことだからね!

アパトゥ:君、ユダヤ人だってばれてないと思っているみたいだけど、バレバレだから。

スチュワート:何??ぼく、君たちの仲間だと思われているわけ?

これ、背景を知らないとわけのわからない会話かもしれないので、ちょっと解説しますが...長くなるので、まあ興味のあるかただけどうぞ。

ジョン・スチュワート(Jon Stewart)の元の名前はジョナサン・スチュワート・リボウィッツ(Jonathan Stuart Leibowitz)いいます。(「本名」でなく「元の名前」と言ったのは、ジョンは結婚する時、奥さんと一緒に本名も「スチュワート」に変えているから。NY州ではわりと簡単に名前を変えられるらしい。)

ジョンは名前を変えた理由を明らかにしたことはないのですが、エスニック色の強い本名を、より一般的で発音しやすい芸名に変えるなんてことは誰でもやっていることで、少し例を挙げれば、ジョンの尊敬するレニー・ブルースはレナード・シュナイダー、ウッディ・アレンはアレン・スチュワート・コニグスバーグ、メル・ブルックスはメルヴィン・カミンスキーという本名です。ジョンの場合、ミドルネームを採用して(綴りはより一般的なStewartに変えていますが)、ラストネームを省略しただけなんですけど。

本名も変えたことについては、ただの憶測ですけど、ジョンが10歳の時に家を出て行ってしまった父親と折り合いが悪いせいだとも言われています。(姓っていうのは、結局は父親の名前ですものね。)まあ、そうだとしたらごく個人的なことで、他人がどうこう口出すのはまことに失礼な話であります。

それと、ひょっとしたら結婚の時に名前を変えたのは、「スチュワート」がたまたまスコットランド系の名前で、奥さんがスコットランド系(旧姓はマクシェーンMcShane)だからってこともあるのかな。ま、これも余計なお世話ですけど。

しかし。どういうわけか以前から、ジョンがいかにもユダヤ系っぽい「リボウィッツ」という名前を使わないで「スチュワート」と名乗っていることについて、「ユダヤ人であることを恥じているからだ」と、アホな文句をつける人が後を絶たないのですよね。

特に最近、Slateとかいうサイトに、「ジョン・スチュワートへの公開書簡」として、ジョンはユダヤ系であることを「カムアウト」して、名前を「リボウィッツ」に戻すべきだ、という主旨の馬鹿げた記事が載ったことで、この話はまたあちこちで話題になっていたのです。

まったく、なんだよ「カムアウト」って!ジョンはほとんど毎日のように、自分がユダヤ系であることをネタにしたジョークを言っているのに。イスラエル関係ネタでは、私などついてゆけなくなるぐらいジューイッシュ・ジョークを連発するし、去年の脚本家ストの時なんか、特派員のロブ・リグルに「脚本家がいないと、あんたのジョークはユダヤネタ(Jew Joke)ばっか!」と言わせて自虐ネタをやっていたぐらいなのに。本名を芸名にしているアダム・サンドラーやベン・スティーラーより、よっぽどジューイッシュであることを意識したスタイルでやっているのに。

だいたい、こういう記事を書く輩が、ウッディ・アレンメル・ブルックスが名前を変えていることに文句をつけたって話なんて、聞いたことがない。だから、勘ぐればやっぱり、ジョンがガザ封鎖のことでイスラエルを批判したからじゃないか、とか思ってしまうのです。

まあ、ここのところそういう記事を読んではイライラしていたので、上の皮肉な会話は非常に痛快だったのです。

(野暮を承知で解説すると、上の会話の意味は要するに、「ぼくがユダヤ系だということを『隠している』なんてアホらしい。名前みたいな個人的なことで、いちいち同民族の顔色を伺うなんてことはしないよ。放っとけ!」ってところでしょうか。)