SはSocialism(社会主義)のS

先週の「The Daily Show with Jon Stewart」のハイライトは、月曜の「本物のアメリカ、偽のアメリカ」だったのですが、その他で印象に残ったセグメントをひとつだけ。

「テロリストの仲間」という攻撃が思ったほど効果を上げなかったので、マケイン陣営は次なるアングルとして「Sワード」を使い出したそうな。

「Sワード」といえば、普通はShit(クソ)のことなんですが(ん?私、Fワードは書かないようにしているのに、こっちは抵抗なく書けてしまうのはなんでだろう…)

この場合の「S」はSocialist(社会主義者)のことらしい。

The Daily Show with Jon Stewart 2008/10/21 MaCain says S-word

年収25万ドル以上の高収入層を増税中流層を減税するオバマの税制改革案は、「富の再分配」で「社会主義」だと批判するマケイン氏、「今は社会主義の実験をしている場合ではありません!」と叫ぶペイリン氏。

不思議なのは、この演説を聞いている人たちの中で、年収25万ドル(2500万円)を超えている高収入層なんてほとんどいないと思うのですよね。国民健康保険のこともそうですが、どう考えても実際には自分の得になる制度なのに、「社会主義だから」反対するっていうのは…人ごとながら、なんなんだろう。

この、「金持ちほど税金が高くなる」=「富の再分配」=「社会主義」=「悪」というアメリカ人の思い込みは一体何なんでしょうね。私など、(まあ程度の問題はあるとはいえ)富の再分配なしで社会は成り立たないし、基本的に金持ちほど税金が高くなるなんて当ったり前のことだと思っていましたが。金持ちほどたくさん税金払う=社会主義なら、日本は(たぶんヨーロッパのほとんどの国も)社会主義国ってことになっちゃう。私たちはずっと「社会主義国」に生きていたんだ。知らなかったなあ…

でも、たぶん…「社会主義者」というのは「イスラム教徒」「テロリスト」「私たちとは違う見方でアメリカを見ている人」というのと同じで、要は「黒人だから」ということをはっきり言わずに「彼は異質」ということをアピールするイメージ戦略の一環なのであって、本来の「社会主義」がどういう意味かなんて、あんまり考えていないのでしょう。

このセグメントの極めつけは、マケイン氏自身、以前は高収入層への増税に賛成だったという昔のクリップ。

(私の父のように長く教育を受けて医者になった人が多く税金を払うのは不公平ではないか、社会主義に近づいているのではないかという女性からの質問に答えて)

2000年のジョン・マケイン:(税金を)払える余裕のある人、生活の質があるレベルに達している人が多く払うのは、悪いことではありません。

ジョン・スチュワート:もちろん、これは社会主義のリーダー、故・ジョン・マケイン氏です。彼は共和党予備選の期間中に亡くなったようです。惜しい人を亡くしました。

ジョークとして言っているのだけど、「惜しい人を亡くした(He will be missed.)」というのはジョンの本音なんだろうなあ…

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Nさま

うふふ、「男前」って言葉はぴったりですね!私もずっとそう思っていました(笑)。

「本物のアメリカ」っていうこれですが…考えてみればペイリンさんに始まったことじゃなくて、さかのぼればブッシュ大統領9・11の後に言った「我々の味方をしない者はみなテロリストの味方」というやつに繋がっているのかな、と思います。

私は外国人なんで、あれを「我々(アメリカ)の味方をしない者(国)はみなテロリストの味方」と解釈したのですが、国内的に言えばあれは「我々(共和党)の味方をしない(支持しない)者はみなテロリストの味方(アメリカの敵)」ということだったんだろうな。

この間のボストンでのスタンダップのライブの最後のところで、ジョンが9・11の時のことを少し詳しく話していて…家の中が煙だらけになって、「世界は永遠に灰色になったかと思った」って。

そういうことを聞くと、9・11を散々戦争の理由に利用しておいて、挙句の果てに「ニューヨークみたいな大都会はエリート主義で『本物のアメリカ』じゃない」なんて言う人たちに…もう今度と言う今度は、ジョンも本当に頭にきているのがわかります。

こんだけ本気で怒っていても、ちゃんと笑わせてくれるのがカッコイイのですけど。