先週のThe Daily Show with Jon Stewart

先週の「The Daily Show」でいちばん印象に残っているのは、マケイン候補のキャンペーンを取り上げたこのセグメントです。

サラ・ペイリンが加わって以来、また世論調査での形勢が不利になるほど、マケイン陣営のキャンペーンのネガティブっぷりはどんどん泥沼化しているようで。それを「フランケンシュタインのモンスター」に喩えたセグメント。

The Daily Show with Jon Stewart 2008/10/14

ジョン・スチュワート:ブッシュまだ大統領と言えば…彼がワシントンに残してゆくことになる巨大な糞の山にもかかわらず、彼の後継者になりたいっていう競争はまだ続いているんだ。

誰もが経済問題に注目している中で、マケイン陣営が話題の中心にしているのは…

マケイン:本当のバラク・オバマとは何者か?

サラ・ペイリンオバマは、アメリカを理想的な国だと考えず、テロリストと仲良くつるんでいるような人です。

スチュワート:マケイン・ペイリン陣営は連携して怒りと恐怖を煽っている。効果はあるかな?

聴衆の男性:おれは本当に頭に来てる!

聴衆の男性:オバマが大統領になったらと思うと恐ろしいです。

スチュワート:…あったみたいだね。ここでひとつ問題がある。マッド・サイエンティストなら誰でも知っていることだけど、モンスターを作り出した喜びは、そのうちに醒める時が来る。それはたいがい、そのモンスターが暴れ出して、研究所のガラクタを手当たりしだいに壊しはじめる時なんだけど。

(聴衆がオバマに対して「嘘つきだ!」「テロリストだ!」と叫んでいるのを聞いて、明らかに引き気味のマケイン氏)

スチュワート:「イゴール、これってOFFのスイッチはついてないの?…タスケテ!」…もうひとつの問題は、モンスターが火を恐れるように教え込んでしまったら、火は料理にも使えるってことを教えるのは難しいってことだ。

マケイン:(オバマは)ちゃんとした人間で、大統領になることを怖れなければならないような人間ではない…(聴衆から激しいブーイング)

スチュワート:(ライターを出して)「ほらね、怖くないよ〜!」…タバコが懐かしいなあ。

ジョンは元ヘビースモーカーだったけど、2000年ごろにきっぱり禁煙してるんです。こんなに経ってもまだ吸いたいってことあるのかなあ。

スチュワート:モンスターを作ってしまったら、最悪なのは、いつ自分に向ってくるかわからないことだ。

聴衆のクレージーなおばさん:オバマは信用できません。彼のことを読んだんですけど、彼は…アラブ人だわ。

マケイン:(おばさんからマイクを取り上げて)…奥さん、それは違います。彼は立派な家庭人で、ただ私とは意見が違うだけです。

スチュワート:「ほら、いいからそのマイクをこっちへ寄こして…寄こせっての、フランケンシュタインのモンスター!信用できないっていうのはいいけど、アラブ人ってのは言いすぎでしょ!」

「彼はアラブ人でしょ」「違う、立派な家庭人だ」…ちょっと待って、マケインさん…クレージーなおばさんをたしなめるのはいいけど、そのたしなめ方はちょっと違うんじゃないの?

違うんじゃないの?ってところがあれば、必ず突っ込んでくれるのがThe Daily Showのいいところで。

The Daily Show with Jon Stewart 2008/10/14

アッシフ・マンドヴィ:アラブ人であることと、ちゃんとした家庭人であることは、必ずしも矛盾しないんだ。ある人種の血を引いているひとが、何かのはずみで家族を愛してもいるということがあり得ないという数学的証拠はないからね。

スチュワート:君の言い方を聞いていると、そんなことはほとんどないって言ってるように聞こえるんだけど…つまり、アラブ人であって、家庭人でもある人はいるということだよね?

マンドヴィ:…意味がわからない。

スチュワート:逆に言おうか。アラブ人ではなくて、ちゃんとした家庭人じゃない人もいるよね。

マンドヴィ:もちろん。それは「イタリア人」と呼ばれている。

スチュワート:ちょ、ちょっと待って…いろんな段階のクレージーさが混ざっているような…まず、オバマ候補に対する誤解があって、次にその誤解に対する誤ったネガティブな概念があって…「オバマ=アラブ人=イスラム教徒=テロリスト」という…

マンドヴィ:かんべんしてよエリートさん、算数は苦手なんだから。

スチュワート:そこなんだよ。まるで、無知であることを誇っているような…

マンドヴィ:その通り!ぼくらにも発言の権利はあるだろう?

スチュワート:ぼくらって?

マンドヴィ:「無知な人々」だよ!このキャンペーンは、ぼくらのような人々の声を代弁するものだ。ぼくら「あんまり声を出すべきじゃないかもしれない人々」の声をね。ぼくは彼らを応援するね。こうやって…「ウォー!アッシフ、賛成!」

このセグメントに出てきた聴衆たちって、けっこうぞっとさせられるものがありますが…

まあ、この選挙キャンペーンがなくったって、こういう人たちは元々アメリカにいたことは確かで、マケイン・ペイリン組が作った怪物というのは言いすぎかもしれないんですけどね。

しかし…一部の聴衆の態度に、マケインさんはさすがに引いているみたいでしたけど、ペイリンさんは嬉々としてこの路線に乗っているし、「オバマ私たちとは違う考え方をする人だ」とか、(保守的な地域で演説して)「この国の中でもアメリカの味方である地域に来られて嬉しい」とか言っているようですし…

こういう人を、副大統領という重大な地位の候補につけたということ自体、この聴衆たちのような無知で閉鎖的で人種差別的な人たちに「堂々と全国的に声を上げていいんだよ、あなたたちがこそが真のアメリカ人なのだから」とお墨付きを与えているも同然で、もしマケイン・ペイリン組が落選したとしても、その事実は消えてなくなりはしないんだろうな、と思います。

やれやれ。