先週のThe Daily Show with Jon Stewart

ホントのことを言えば、共和党副大統領候補の話はウンザリしているんですけどね〜。はっきり言ってあの人、顔を見るのもイヤだし。でも、やっぱり先週のThe Daily Showの中で一番印象的なセグメントはこれだったし、なんだか書いておきたくて。

サラ・ペイリンといえば、人気ナンバーワン・コメディエンヌのティナ・フェイサタデー・ナイト・ライブでやっているスケッチが大評判ですが…

私はデイリーショーの方が面白いと思う。(はいはい)

ちなみにティナ・フェイは、エミー賞のときのインタビューでペイリンのモノマネのことを聞かれて、「11月5日以降は、もう絶対にペイリンを演じたくない。(当選させたくないということ)私が11月以降、ペイリンを演じなくてすむように協力して!」と言ってましたね。やっぱり大嫌いらしい。(まあ、ショウビズ界で好きな人はいないと思うけど)

ティナ・フェイもパロディにしていた、CBSのキャスター・ケイティ・コーリックによるペイリンのインタビューについてのセグメント。

The Daily Show 2008/10/1

スチュワート:10月といえば、新番組のシーズン!ぼくがいまハマっている番組は、CBSの「ドラマティ」なんだ。

コーリック:彼はまだその会社の株を持っています。これは利害の対立ではないですか?

ペイリン:…………

スチュワート:彼女のメガネのこのあたりに「バッファリング中…バッファリング中…」と出ているみたい。

ネットでよく動画を見る人には、非常にわかりやすいジョーク。接続が遅いのね。

スチュワート:この番組大好き!「LOST」のファーストシーズンみたいだけど、あれより意味がわからない!

コーリック:マケイン上院議員の26年間の経歴の中で、(市場の)規制を推進した具体的な例を挙げてみてください。

ペイリン:あ〜、調べてみて分かったら知らせるわね!

コーリック:世界情勢観を形成するために、あなたはどの新聞や雑誌を定期的に読んでいますか?

ペイリン:…全部です!ずっと、その時、目の前にあるものを何でも…

このへんはまだ笑えるんですけどね〜。馬鹿にして笑っているうちに、だんだん怖くなってくるのがこの人の特徴でして。

地球温暖化の原因は人類の活動にあるかどうかという質問に対して)

ペイリン:今となっては、何が原因かなんて関係ないと思います。とにかく温暖化は本当で、何とかしなければならないというだけです。

スチュワート:何が原因かは関係あるだろ!原因は関係ない?『あー、あなたは肺癌です。そうなった原因はさっぱりわかりませんが…とにかく一服したら良くなるかな?』

コーリック:15歳の少女が、父親にレイプされて妊娠したとします。彼女が人工妊娠中絶することを違法にすべきだというのがあなたの信念ですよね。なぜですか?

ペイリン:私なら、カウンセリングして命を選ぶよう説得します。

コーリック:あなたは、レイプされた、近親相姦の犠牲者である少女が中絶手術を受けることを違法にすべきだと考えているのですよね。

ペイリン:私はその少女とカウンセリングして、命を選ぶようにさせます。

スチュワート:ふーん…カウンセリングするだって?『パパにレイプされて気の毒だったね〜。それじゃ、子供の名前でも選ぼうか!』

まあ、本当言うと、地球温暖化とか経済とか戦争の問題と違って、中絶の問題っていうのはアメリカ国内だけのことだから、日本の私がどう考えようが関係ないんですけどね。なのに、何でかわかんないんだけど、妙に気になるポイントなんです。また、この話をしている時のペイリンさんが、一段とヤナカンジなんだよな〜。

SNLのスケッチは笑えるのだけど、ティナ・フェイは感じのいい女性だから、このひとの「そこはかとない怖さ」が出てないのが物足りないのかも。

続いて、妙に面白かったセグメント。

The Daily Show 2008/10/1

(CMから戻ると、ジョンのイスにセミレギュラー・レポーターのクリスティン・シャールが座っている)

クリスティン・シャール:サラ・ペイリン知事が副大統領候補に指名されて…

スチュワート:クリスティン、何してるの?

シャール:「デイリー・ショー」の司会をしてるのよ!ルールは変わったのよ。サラ・ペイリンは、とにかく思い切って飛び込めば女性には何でもできることを教えてくれたの。スマートなビジネススーツを来て、この「パワー眼鏡」をかければ…まあ、あなたハンサムね。でもずいぶん背が低いのね…残念。

スチュワート:クリスティン、ぼくはトイレに行ってただけなんだけど…

シャール:トイレが敗因ね!オバマが、ヒラリー・クリントンを候補に選ばなかったせいでチャンスを逃したようなものね。みなさん、デイリー・ショーの「シニア・男性問題特派員」のジョン・スチュワートです。そこに座って、男性の問題について語っていいのよ。でも、4〜5週間に一回以上出られると思わないでね。これが新しいアメリカよ!最高!…どんな気分?

スチュワート:…小さくなった気分。あの〜、君がサラ・ペイリンのことで喜んでいるのはわかるけど、本当に彼女が女性の代表でいいの?

シャール:どうして?

スチュワート:彼女は中絶反対で…女性の選択の権利を奪おうとしているし…

シャール:少なくとも、奪うのも女性でしょ!

スチュワート:彼女がアラスカの町の町長をしている時、その町ではレイプの被害者がレイプ・キット(※1)の費用を払わなければならないようにしていて…被害女性自身がそのお金を負担するように…

シャール:世の中厳しいのよ。それに、レイプされただけで、お金を盗まれたわけじゃないでしょ?

スチュワート:(かなり引いて)クリスティン、あの…

シャール:ジョン、邪魔しないで。サラ・ペイリンホワイトハウスに理想的な女性じゃないかもしれないけど、彼女しかいないのよ。だから、悲しむより喜ぼうとしているのよ。

(サマンサ・ビーが登場)

ビー:クリスティン、何してるのよ。

シャール:司会をしてるのよ。これからは女性の時代!

ビー:ちょっと、私はこの番組に5年も出てるのよ。フランスの「ソルボンヌ司会者学校」に9年も通ったし。私の方が適任でしょ?

シャール:あなたって男女差別主義ね!

ビー:何?

シャール:私が女だからできないって言うの?

ビー:私は女なんだけど!

シャール:質問は受け付けないわ!私は勉強中なのよ!イジワル質問だわ!私の家からはレターマンの番組のスタジオが見えるのよ!私は一匹狼だもん!(※2)エリートなんかにほめてもらわなくて結構よ!

スチュワート:あの…ぼくは君のボスなんだけど。

シャール:(無視)今夜のゲストは、ずっと私の目の前にあった雑誌や新聞のひとつの編集長、ギデオン・ロー!ようこそ!えーと、中東!あそこってタイヘンですよね。どうしてかしら?

ゲスト:複雑ですね。それぞれ違う歴史、文化、宗教をもった人々がいて…たとえばスンニ派シーア派ですが、ご存知ですよね。

スチュワート:あー、もういいよ!(出てゆく)

ゲスト:わかりますか?

シャール:分かったら知らせるわね。(サマンサに)この人、退屈!ジョンは?呼んで来てよ。

ビー:クリスティン…言いにくいけど、ジョンは死んだの。

シャール:何?どうして?

ビー:彼はとっても、とっても、とっても…年寄りだったから。彼を司会者に選んだ時、そのリスクがあるってことは分かっていたわ。

シャール:そんな、突然…20秒も経ってないのに…

ビー:これで、永遠にこの番組の司会をやらないといけなくなったわね。

シャール:そんな…私、本当はこんなことに全然興味ないのに…そうだ、この番組、ネットオークションで売るわ!このゲストも込みで!これで解決!それじゃみなさん、さようなら!

ビー:クリスティン、ありがとう。それでは、CMの後で…

スチュワート:サム!サム、どいて。

ビー:「CMの後で」ぐらい言っていいでしょ!サルでも言えるわよ!

スチュワート:ダメ!「CMの後で!」

クリスティンにイスを取られてしゅんとしているジョンと、サマンサとイスの取り合いをする大人気なさがかわいかった。

抱腹絶倒ってわけじゃなくて、ちょっと複雑なキモチにもなるセグメントなんですが…妙に印象に残るセグメントだったのです。

クリスティンが「レイプされただけでお金を取られたわけじゃない」と言った時の、観客の「これ、笑っていいのかな…?」というようなフクザツな反応が、なんともいえませんでしたね。

※1 レイプ・キット:レイプの被害者が病院で手当てを受ける時に、犯人を特定する証拠を集めるための医療器具のセット。価格は500ドル〜1000ドルだそうです。このお金が払えないために被害届を出さない女性もたくさんいたんだろうなあ。

※2 「私の家からはロシアが見える」(から外交のことを知っている)というサラ・ペイリンの言葉のもじり。ん?ということは、デビッド・レターマンの「Late Show」は、デイリー・ショーにとってのロシアなのか?