【映画感想】アクロス・ザ・ユニバース ☆☆☆1/2

私は特にビートルズファンってことはなくて、世代的にも10年ぐらいずれているし、まあ、この映画に出てくるような有名な曲はひと通り知っているという程度なのですが、楽しめました。

まあ、100%楽しめたかというと、ちょっとフクザツなんですが。いいナンバーはすごくいいんですけど、残念ながら、そうでもないナンバーもあって。

たとえば冒頭の「Girl」なんか、歌うジム・スタージェス(役名ジュード)の声がポール・マッカートニーに似ていることもあって、ぐっと引きこまれたし…アジア系のT.V.カーピオ(役名プルーデンス)の歌う「I Want To Hold Your Hand」は、ほんとにほんとに素晴らしい!

一方、そういう自然なシーンに比べて、徴兵検査のシーンや病院のシーンの凝ったミュージカル演出はあまり効果をあげていないし、トリップシーンの「サイケデリック」な映像はなんというか「いかにも」で、私には退屈でした。

ま、ワタシは葉っぱもLSDもやったことないから、そのせいでわかってないのかもしれないけどね(笑)。

1960年代の映画を2007年に作るのなら、ただ懐かしがってるだけじゃなくて、やっぱり「今作る意味」ってものがないといけないと思うのです。

<以下、ストーリーではなく、使われている曲のネタバレ>

「I Want To Hold Your Hands」のシーンでプルーデンスがゲイだってことが分かった時、「お、これが21世紀らしさなのかな。60年代にはこういうのは描けなかったし」と思ったのだけど…彼女の話はその後あんまり展開がなくて残念です。

ベトナム反戦運動も、現在のイラク戦争に、つながりそうでつながらない。むしろ事情の違いが際立って見える。徴兵制があることとか、テレビでちゃんと生々しく報道されているところとか…(それはそれで興味深くはあるけれど。)

でも…ベトナムの場面と重なる「Strawberry Fields Forever」あたりから俄然乗ってきて、ジュードが過激化する反戦運動の本部に乗り込んで歌う「Revolution」、マーティン・ルーサー・キング暗殺の時にマーティン・ルーサー(役名ジョージョー)が歌う「While My Guitar Gently Weeps」、予想通りとはいえハマっている「Hey Jude」、そしてやっぱり「All You Need Is Love(愛こそはすべて)」…と、終盤はなかなか感動的に盛り上げてくれるのでした。

でも、その感動のほとんどは要するにビートルズの音楽の力であって、この映画の手柄にしちゃっていいものかどうか迷うのですが…まあ、それはこういう映画である以上、一緒に語らなきゃしょうがないよね。