【映画感想】ダークナイト ☆☆☆☆

評判どおり、ヒース・レジャーのジョーカーは素晴らしかったです。

私はティム・バートン=マイケル・キートン版のバットマンも好きなんですが、ジャック・ニコルソンのジョーカーは評判が良かったけど、どちらかというと演技過剰でバランスを壊しているような気がしていました。

ヒース・レジャーがジョーカーと聞いた時は、あまりにイメージが違うのでどうかなあと思っていたのですが…見てみると、すごくハマっているので驚きました。ジョーカーという人が、どうしてあんな風になったのか、どういうわけでああいうメイクをしているのか…というような理屈も解説も一切抜きで、もう最初から「ああ、あれはああいうヒトなんだな」と納得させてしまうのがすごい。

でもね、この映画のいいところは、彼だけが目立って他を食ったりはしていないところだと思う。他のキャストが全員、それぞれにいいんですよ。

クリスチャン・ベールマイケル・ケインモーガン・フリーマンマギー・ギレンホールもいいんだけど、私が特にいいと思ったのはハーヴィー・デント検事役のアーロン・エッカートと、警官役のゲーリー・オールドマンでした。

もともとバットマンというのは、スーパーヒーローなのにスーパーパワーは一切持っていなくて(まあ、大金持ちだというのを除けば)、生身の人間として戦わなければならないという特徴なのだけど…

この映画ではバットマンだけじゃなくて、他の人たちも、弱点丸出しの生身の人間のまま「英雄」にならざるを得ない。しかもバットマンみたいに「匿名」じゃないので、家族や恋人だって狙われてしまうし。特にアーロン・エッカートの検事と、オールドマンの警官については、そのあたりの辛さ苦しさがほとんど容赦なく描かれていて、自然とこの二人に注目してしまいます。

<以下ネタバレ気味>

それどころか終盤では、検事でも警官でもない普通の人々までが「英雄として死ぬか、生き延びて悪人になるか」の選択を迫られる。なにしろ、ヒーローからして万能の超人じゃないので、助けは間に合わないこともあるし…誰も彼もが自分で選択しないといけないのだ。

こんなにも安心感を与えてくれないスーパーヒーローものってあるだろうか(笑)。でも、そこがいいのよね。船の乗客たちが下す「決断」には、引きこまれてしまいました。

以上、ドラマっぽい部分についてばかり書きましたが、スーパーヒーローものらしい「笑っちゃうほどのカッコよさ」もちゃんと満載なのが素晴らしい。思いっきりお金を遣っていそうなところも爽快だし。私のお気に入りは飛行機に「乗る」シーンと、バットモービルがトランスフォーム(?)するところです。